ふるさと納税制度の改革とパブリテックの推進~チェンジの挑戦

・3月末に、改正地方税法が成立した。ふるさと納税制度において、過度な返礼品競争を防ぐためのものである。寄付者に贈る返礼品を、寄付額の30%以内で地場産品に限るとした。商品券や家電製品などは認められず、30%を超える調達額で返礼することもできない。

・このルールを順守する自治体のみに税優遇を認める。総務省は4月より自治体からの指定申請を受け付け、6月から新しいルールでのふるさと納税がスタートする。ふるさと納税は寄付である。自治体に寄付をすると、納税した地方税が確定申告で戻ってくる。

・ECサイトで商品を買うように、ふるさと納税サイトに行って、応援する自治体の返礼品(商品)を選んで、それを購入する。購入なので、その時にはきちんと全額を支払う。そうすると自治体から返礼品と寄付の証明書が送られてくる。

・それを確定申告の時に税務署へ提出すると、その分の税金が戻ってくる。これは、かなりのお得感がある。税金分で商品をもらえるのだから、使わない手はない。

・ふるさと納税サイトはいろいろある。ふるさとチョイス、さとふる(ソフトバンク系)、楽天ふるさと納税、ふるなびなど数多い。その中で、ふるさとチョイスがNo.1である。

・上場会社のチェンジ(コード3962、時価総額530億円)は、昨年11月末にふるさと納税サイトでNo.1のトラストバンク(TB)を買収した。TBは、「ふるさとチョイス」を企画・運営し、ふるさと納税の取り扱い規模で圧倒的№1、寄付金額ベースでシェア57%を有する。

・TBは全国の自治体に圧倒的なネットワークを有する。チェンジは、ここと連携してパブリテック(パブリックセクターのNew-IT)をする。買収金額は48億円(持株比率60.11%)、収益性は高いので、今後への期待は大きい。

・パブリテックの貢献を軸に、チェンジの中期目標は営業利益ベースで、2018年9月期(単体)5億円に対して、2019年9月期(連結)14.5億円、2020年9月期21~26億円、2021年9月期43~51億円と急拡大を目指す。実行戦略が明快なので、実現性は高い。

・ふるさと納税の寄付金額の推移をみると、業界全体で2012年度104億円、2013年度145億円、2014年度389億円、2015年度1653億円、2016年度2844億円、2017年度3653億円と急拡大をみせている。

・ふるさとチョイスは、返礼のデータを1つのサイトにまとめて、決済できるようにした。ワンストップのふるさと納税の仕組みが画期的である。現在、主要35県、1430の自治体と契約し、返礼品の掲載数は20万点に及ぶ。

・TBは、「ICTを通じて地域とシニアを元気にする」というミッションのもとで、日本最大のふるさと納税プラットフォームビジネスを築いてきた。一方、チェンジ本体はAIやRPAなどNew-ITを用いて自治体の業務改革に取り組んでおり、パブリックセクター向けのサービスが事業の柱に育っている。

・チェンジの福留社長とTBの須永珠代代表取締役とは、この自治体向けのビジネスで知り合って、一緒に仕事をすることも増えていた。その中で、TBにM&Aの話が出た時、競合企業よりもチェンジと組んだ方が互いのミッションを共有して、事業が発展できると認識した。

・TBの地域事業の支援とチェンジの自治体内でのNew-ITの活用を上手く合体して、新しいシナジーを出していくことになろう。チェンジからみると、TBは全国1430の自治体にネットワークをもっているので、従来と比べものにならないくらいの速いスピードで入っていける。

・地域振興、自治体のサービス、生産性の向上、というパブリテック(公共セクターのテクノロジー革新)を推進していく。さらには、インバウンド関連、デジタル決済も視野においている。

・自治体は変化に対して一般に保守的である。ところが、ふるさとチョイスについては、参加した自治体がみな目を見張っている。このプラットフォームを活かして、自治体のサービス改革をさらに進めることができよう。これがビジネスになる。

・全国自治体の業務をみると、かなり共通のものが多いはずなのに、それをサポートするシステムは別々にできている。このためのシステムに6000億円が投資されてきたが、これを共通化して、新しい仕組みにしていく。

・これによって、コストが下がり、サービスの生産性が上がっていく。サービスを受ける住民も、オンラインで手続きができるようになれば、今までより手間がはぶけ、時間もかからなくなる。

・インバウンドの取り込みで、来日観光客を地方に呼び込み、そこで、デジタル決済ができるようになれば、使うお金も増えてくる。中国、香港、台湾、韓国の通貨で決済できるようにすれば、利便性は相当上がる。これをチェンジがリードしようとしている。

・TBのふるさと納税関連取扱高は2017年度で2099億円を占めた。これを、国内のECプラットフォームの流通額でみると、分野は違うが、楽天、アマゾン、ヤフー、メルカリ、ゾゾタウンに次いで、第6位に位置する。

・チェンジは、ふるさと納税事業を伸ばしたいだけでTBを買収したわけではない。ふるさと納税の利益を合算して企業規模を大きくするというのが第一の目的でもない。もちろん、ふるさと納税関連事業にこれからも力を入れていく。

・チェンジは、本体のパブリックの事業、人材をTBに移して、ここで新しいパブリック事業を伸ばしていく。その時、ふるさと納税事業を通して、地域の自治体とつながっていることが大きな強みになる。自治体のサービスをNew ITの導入によって一新するというのが、最大のねらいである。

・ふるさと納税事業には、2つの注目点がある。1つは、自治体によって、ふるさと納税の本来の趣旨を逸脱して、資金を集めているところがあった。返礼率を高くして、しかもふるさとの物産を活かして地域振興を図るという対応をせず、単に金を集めればよいという姿勢がみられた。総務省はここに規制を加えることにした。それでも、ふるさと納税という本来の仕組みは活かされるので、ネガティブに捉える必要はない。

・もう1つは、ふるさと納税のプラットフォームを提供する手数料率にある。この手数料率はTB(ふるさとチョイス)の場合2%である。これが競合他社では9%~12%と高い。この手数料をサービスの改善を取り入れながら5%に上げることは競争条件からみて十分可能である。これがポジティブな効果をもたらそう。

・2000億円の取扱高の2%は40億円、これを5%にできれば100億円の手数料収入(売上高)となる。固定費型ビジネスなので、その時の営業利益は50億円レベルとなろう。つまり、収益性を改善する余地が大きいといえる。

・パブリテック事業では、New ITで新しい可能性がある。TBは1430の自治体と取引があるが、全国の自治体は既存のITに6000億円のお金を使っている。この従来型のシステムは、各自治体がバラバラに構築し、それを富士通、NECなど大手が担ってきた。

・この牙城を崩して、効率化を進めるというねらいである。新しいIT、AI、RPAなどを使って、自治体に共通の仕組みをプラットフォーム化すれば、6000億円が3000億円で済むと福留社長はみている。ここにチェンジのチャンスがある。

・自治体では、地域の人口が減り始めている。サービスの効率化、コストダウンを図る事は急務である。一方で、社会保障費は増えていく。高齢者のためのサービスを充実する必要がある。お金の使い道を大幅に変えざるをえない。

・また、地域経済をうまくまわすには、地域のエコシステムを活用して、地域共創を図っていく必要もある。例えば、ふるさとチョイスのほかに、名物チョイスなどにも活かせる。ここに自治体ポイントを導入することもできる。

・地域の中でお金をまわすことが重要である。外国人に来てもらって、デジタル決済ができるようにする。このようなところでNew ITを活用していく。実現性の高いストーリーなので、大いに期待したい。

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配信元: みんかぶマガジン
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