■事業概要
1. 事業内容
J-オイルミルズ<2613>は国内で搾油し、国内で油脂・油糧製品を販売することを主力事業としている。これまで油脂汎用品の需要は安定しているが、大きく伸びず横ばいであった。1)少子高齢化や女性の社会進出といった国内環境の変化による需要構造の変化が起きている。2)原料を輸入に依存しているため、海外の大豆相場や菜種相場、為替相場の変化も収益に影響を与える構造になっている。このため同社は、統合した3社がそれぞれに培ったノウハウや技術をもとに、「あぶら」の持つ価値や可能性を広げ、調理、健康、調味といった様々な機能の高付加価値化を徹底的に追求することで、収益性と成長性を志向することになった。なお、売上高のセグメント別構成比(2019年3月期第3四半期累計)は油脂事業85%、油脂加工品事業7%、食品・ファイン事業7%、その他1%となっている※。
※用途別には、家庭用(植物油とマーガリン)と業務用(植物油とタンパク質、スターチ、その他)、油糧(ミール)に分けることができる。
(1) 油脂事業
油脂事業は、安心・安全を基本に、幅広い用途に使われるサラダ油やキャノーラ油などベーシックオイルから、調理や調味、健康といった様々な領域で使うことのできる高付加価値品まで幅広い品ぞろえとなっている。消費者や顧客企業に対し、「油を良い状態で使っていただく」「油で美味しく」「油で健康に」という3つの軸で貢献することを目指していることが、背景にあると思われる。油脂事業の用途別売上高構成比(2019年3月期第3四半期)は家庭用17%、業務用54%、油糧28%となっており、業務用に強い同社の特徴が表れている。
a) 家庭用油脂
「AJINOMOTO」ブランドで有名な家庭用油脂では、国内オリーブオイル市場リーディングブランドの「AJINOMOTO®オリーブオイル」や栄養機能食品「AJINOMOTO®健康プラス」、特定保健用食品「AJINOMOTO®健康サララ」など、消費者のおいしい料理づくりと健康づくりに役立つ各種商品を取りそろえている。また、本格的な料理を手軽に味わうことができる香味油や調味油も充実させており、2018年秋季新商品として炒飯油と花椒油をラインナップに加えた。
b) 業務用油脂
市場シェア40%を誇る業務用油脂では、独自技術により酸化を抑制するなど長持ち効果がある「長調得徳®」シリーズをリニューアルし、さらに長時間使用できる新商品を投入した。また「J-OIL PRO®プロのための調味油」シリーズのラインナップに、強い直火で焼いた香ばしさと焼くことによる旨みを増強した、肉メニュー用の「J-OIL PRO®プロのための調味油グリルオイル」を新たに追加した。
c) 油糧(ミール)
大豆や菜種などの原料を搾油処理した後の搾り粕(ミール)は、良質なたんぱく質や糖質を多く含んでいる。このため、主に大豆ミールは配合飼料、菜種ミールも配合飼料の原料に活用されている。大豆などと同様に大豆ミールにも国際相場があるため、外部環境の影響を受ける。
(2) 油脂加工品事業
油脂加工品事業では、マーガリンやショートニング、粉末の油脂などを取り扱っている。固体・粉体の油脂には液体の油脂にない様々な機能と商品化の可能性があり、同社は長年にわたって独自の技術を蓄積するとともに機能を生かした新たな価値を創出、顧客のニーズに対して提案を続けてきた。
a) マーガリン・ショートニング
家庭用マーガリンでは、長く好評を得ている「ラーマ」ブランド商品を販売している。業務用マーガリンでは、製菓・製パン分野における顧客の課題解決に向けた提案を強化しており、独自のフレーバー技術でバター風味を実現した「マイスター」や、バターコンパウンドマーガリンの「グランマスター®」シリーズの商品などを展開している。なお、2019年に入って、同社はオーストリアBackaldrinのミックス粉の輸入販売を開始した。Backaldrinのミックス粉は健康や安心といったニーズにフィットした商品であることから、製菓製パン分野でのソリューション強化に活用していく方針である。
b) 粉末油脂
粉末油脂は、油でありながら粉ものや水への分散性に優れる上、乳化食品のため油のおいしさと水溶性のおいしさを併せ持つユニークな商品である。現在はまだ、粉末油脂はコーヒー用クリーマーやスープに活用されており、同社が長年培ってきた独自技術が採用されている。
(3) 食品・ファイン事業
食品・ファイン事業は、原料から出る粕や微量成分が持つ効果に着目した事業である。食品分野以外も含めて生活全般に役立つ様々な商品を開発し販売している。食感改良材として様々な加工食品に使われるスターチのほか、住宅建材などの接着剤として使われるケミカル、ビタミンK2やイソフラボンといった素材など様々である。
a) スターチ
スターチは、トウモロコシやタピオカ由来のでん粉の製造販売に加え、これらのでん粉をベースに、同社独自の高機能加工を施した加工でん粉の製造販売をしている。加工でん粉は惣菜や畜肉商品、米飯、麺類などに幅広く利用され、ジューシー感、食感改良等様々なおいしさを料理に加えることができる。
b) ケミカル
同社の合成樹脂接着剤・塗料は、環境に配慮した接着剤・塗料として、住宅建材から家具などの生活必需品にまで様々な場面で使用されている。なかでも主力商品の木材用接着剤は、スギやヒノキなどの国産材の有効利用の一端を担っており、ESGに配慮した商品となっている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 宮田仁光)
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1. 事業内容
J-オイルミルズ<2613>は国内で搾油し、国内で油脂・油糧製品を販売することを主力事業としている。これまで油脂汎用品の需要は安定しているが、大きく伸びず横ばいであった。1)少子高齢化や女性の社会進出といった国内環境の変化による需要構造の変化が起きている。2)原料を輸入に依存しているため、海外の大豆相場や菜種相場、為替相場の変化も収益に影響を与える構造になっている。このため同社は、統合した3社がそれぞれに培ったノウハウや技術をもとに、「あぶら」の持つ価値や可能性を広げ、調理、健康、調味といった様々な機能の高付加価値化を徹底的に追求することで、収益性と成長性を志向することになった。なお、売上高のセグメント別構成比(2019年3月期第3四半期累計)は油脂事業85%、油脂加工品事業7%、食品・ファイン事業7%、その他1%となっている※。
※用途別には、家庭用(植物油とマーガリン)と業務用(植物油とタンパク質、スターチ、その他)、油糧(ミール)に分けることができる。
(1) 油脂事業
油脂事業は、安心・安全を基本に、幅広い用途に使われるサラダ油やキャノーラ油などベーシックオイルから、調理や調味、健康といった様々な領域で使うことのできる高付加価値品まで幅広い品ぞろえとなっている。消費者や顧客企業に対し、「油を良い状態で使っていただく」「油で美味しく」「油で健康に」という3つの軸で貢献することを目指していることが、背景にあると思われる。油脂事業の用途別売上高構成比(2019年3月期第3四半期)は家庭用17%、業務用54%、油糧28%となっており、業務用に強い同社の特徴が表れている。
a) 家庭用油脂
「AJINOMOTO」ブランドで有名な家庭用油脂では、国内オリーブオイル市場リーディングブランドの「AJINOMOTO®オリーブオイル」や栄養機能食品「AJINOMOTO®健康プラス」、特定保健用食品「AJINOMOTO®健康サララ」など、消費者のおいしい料理づくりと健康づくりに役立つ各種商品を取りそろえている。また、本格的な料理を手軽に味わうことができる香味油や調味油も充実させており、2018年秋季新商品として炒飯油と花椒油をラインナップに加えた。
b) 業務用油脂
市場シェア40%を誇る業務用油脂では、独自技術により酸化を抑制するなど長持ち効果がある「長調得徳®」シリーズをリニューアルし、さらに長時間使用できる新商品を投入した。また「J-OIL PRO®プロのための調味油」シリーズのラインナップに、強い直火で焼いた香ばしさと焼くことによる旨みを増強した、肉メニュー用の「J-OIL PRO®プロのための調味油グリルオイル」を新たに追加した。
c) 油糧(ミール)
大豆や菜種などの原料を搾油処理した後の搾り粕(ミール)は、良質なたんぱく質や糖質を多く含んでいる。このため、主に大豆ミールは配合飼料、菜種ミールも配合飼料の原料に活用されている。大豆などと同様に大豆ミールにも国際相場があるため、外部環境の影響を受ける。
(2) 油脂加工品事業
油脂加工品事業では、マーガリンやショートニング、粉末の油脂などを取り扱っている。固体・粉体の油脂には液体の油脂にない様々な機能と商品化の可能性があり、同社は長年にわたって独自の技術を蓄積するとともに機能を生かした新たな価値を創出、顧客のニーズに対して提案を続けてきた。
a) マーガリン・ショートニング
家庭用マーガリンでは、長く好評を得ている「ラーマ」ブランド商品を販売している。業務用マーガリンでは、製菓・製パン分野における顧客の課題解決に向けた提案を強化しており、独自のフレーバー技術でバター風味を実現した「マイスター」や、バターコンパウンドマーガリンの「グランマスター®」シリーズの商品などを展開している。なお、2019年に入って、同社はオーストリアBackaldrinのミックス粉の輸入販売を開始した。Backaldrinのミックス粉は健康や安心といったニーズにフィットした商品であることから、製菓製パン分野でのソリューション強化に活用していく方針である。
b) 粉末油脂
粉末油脂は、油でありながら粉ものや水への分散性に優れる上、乳化食品のため油のおいしさと水溶性のおいしさを併せ持つユニークな商品である。現在はまだ、粉末油脂はコーヒー用クリーマーやスープに活用されており、同社が長年培ってきた独自技術が採用されている。
(3) 食品・ファイン事業
食品・ファイン事業は、原料から出る粕や微量成分が持つ効果に着目した事業である。食品分野以外も含めて生活全般に役立つ様々な商品を開発し販売している。食感改良材として様々な加工食品に使われるスターチのほか、住宅建材などの接着剤として使われるケミカル、ビタミンK2やイソフラボンといった素材など様々である。
a) スターチ
スターチは、トウモロコシやタピオカ由来のでん粉の製造販売に加え、これらのでん粉をベースに、同社独自の高機能加工を施した加工でん粉の製造販売をしている。加工でん粉は惣菜や畜肉商品、米飯、麺類などに幅広く利用され、ジューシー感、食感改良等様々なおいしさを料理に加えることができる。
b) ケミカル
同社の合成樹脂接着剤・塗料は、環境に配慮した接着剤・塗料として、住宅建材から家具などの生活必需品にまで様々な場面で使用されている。なかでも主力商品の木材用接着剤は、スギやヒノキなどの国産材の有効利用の一端を担っており、ESGに配慮した商品となっている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 宮田仁光)
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