アルプス技研 Research Memo(2):前身の設計事務所から、顧客の要請に応じて技術提供する高度技術者集団へ

配信元:フィスコ
投稿:2019/03/25 16:12
■会社概要

1. 会社概要
アルプス技研<4641>は、機械、電気・電子、ソフト・IT、化学などの分野において、大手製造業各社に高度技術サービスを提供する総合エンジニアリングアウトソーシング企業である。有期雇用が主体の派遣会社と異なり、すべての技術者を正社員として雇用※しているところや、開発・設計などの上流工程に特化した高度技術者集団であるところに特徴がある。

※例えば、リーマンショック時の不況期にも一切解雇していない。


“Heart to Heart”「人と人との心のつながり」を経営理念とし、技術者としてのみならず社会人としても一流であるべしとの思いから、創業以来一貫して、技術力の強化に加え、ヒューマン教育にも注力してきた。特に、質の高い人材を生み出す企業組織文化や、独自の教育・研修体系※に強みがあり、顧客からの高い評価や好調な受注環境にも支えられながら業績は順調に拡大している。

※「能力開発教育体系」と「キャリア開発支援」の2つに大別され、レベルやニーズに応じた教育やキャリアサポーター(先輩技術者)によるフォローなど、高度な技術力や専門性を持った人材を育成するための教育・研修体系が確立されている。また、無期雇用(正社員)であるところも、長期的な育成プランを可能としている。


労働者派遣法改正(2015年9月30日施行)によって、無期雇用派遣は期間制限がなくなったこと、専門業務区分の撤廃によって付随的業務の制限がなくなったこと、改正入管法の成立(2019年4月1日施行)による外国人労働者の受け入れ拡大(在留資格の創設)なども同社にとってフォローの風となっている。

2018年12月末時点の技術社員数は3,518人。そのうち、稼働人数は3,391人となっており、高稼働率を維持している。また、顧客企業の分野別に技術者の人員構成比を見ると、機械系が約40%、電気・電子系及びソフト・IT系がそれぞれ約30%と3つの分野を中心にバランスよく構成されている。

事業セグメントは、国内の派遣・受託等の「アウトソーシングサービス事業」と、海外の日系企業向けの「グローバル事業」の2つに区分される。「アウトソーシングサービス事業」が売上高の96%を占めているが、今後は東アジアを中心として日系企業から需要が強い「グローバル事業」も大きく伸ばしていく方針である。

業種別の売上高では、R&D投資が活発な自動車関連※が38.3%、電機・精密機器・半導体関連が合計で36.8%を占めているが、業種は多岐にわたっており、景気変動の影響を受けにくい構成となっている。また、顧客数は約700社に上るが、売上上位10社(三菱電機<6503>、東芝メモリ(株)、キヤノン<7751>など大手製造業中心)に対する依存度についても20.0%と1社依存を避けている(2018年12月期実績)。

※例えば、技術分野が電機であっても、最終製品がEV(電気自動車)の場合、「自動車関連」に分類している。


連結対象の子会社は、総合人材サービスの(株)アルプスビジネスサービス、2016年9月にグループ入りした技術者派遣事業の(株)パナR&D、グローバル事業を推進する臺灣阿爾卑斯技研股フン有限公司(台湾)、阿邇貝司機電技術(上海)有限公司(中国)に加えて、2018年4月に新規事業分野への参入を目的として設立した(株)アグリ&ケア(農業及び介護関連分野での人材サービス等を行う)の合計5社となっている。本社(横浜市)、アルプス技研第1ビル(相模原市/旧事務管理・総合研修センター)、アルプス技研第2ビル(相模原市/2018年9月末竣工)のほかに、ものづくりを行うテクノパーク2ヵ所、国内営業所23拠点(2018年9月1日付で静岡営業所新設)、海外1支店(ミャンマー)を有する。


開発・設計分野に特化し、高度・先端技術に対応
2. 事業概要
(1) アウトソーシングサービス事業
アウトソーシングサービス事業は、同社の中核事業である。同社は、ものづくりの上流工程である開発・設計分野に特化し、開発設計エンジニアによる高度技術サービスの提供をビジネスモデルの中心に位置付けている。

サービス提供の形態は、派遣と請負の両方があり、顧客の多種多様なニーズに対応し、同社エンジニアのより高いパフォーマンスを発揮させている。派遣については、スポット派遣(エンジニアの単独派遣)とチーム派遣(各種高度技術を有した構成メンバーによる技術者チームが、製品開発・設計業務を行うもの)の形態がある。請負についてはプロジェクト受託(設計・試作・製造・評価を単独または一括で請負う)で、オンサイト(客先構内常駐型)とオフサイト(同社テクノパーク等への持帰り型)がある。

また、設計事務所として創業された当初から、「機電一体設計」をコンセプトとし、メカトロニクス全域の技術ニーズに対応している。特に、ものづくり拠点(自社工場)を持つユニークな業態を強みに、グループ全体で開発→試作→製造→評価にわたるマニュファクチュアリングのすべてのプロセスの対応が可能な体制を有している。なかでも、同社の主な技術対応領域は上流工程で、基礎研究、製品企画、構想設計、詳細・量産設計、試作・実験、評価・解析などであり、高度な技術力を要する領域に優位性を持っている。

技術分野では、機械設計、電気・電子設計、ソフト開発、化学などが中心である。高度ネットワーク社会への変遷に伴い、IoTやAI等、先端技術の開発設計や、更なる需要が期待される3D-CAD、CAE技術、航空宇宙関連、医療関連、ロボット開発技術など様々な先端技術を重点項目としている。したがって、顧客企業の業種としては、自動車、半導体・LSI、産業機器、デジタル・精密機器、航空・宇宙・防衛、医療・福祉機器など多岐にわたる。

(2) グローバル事業
現在の海外子会社は、台湾の臺灣阿爾卑斯技研股有限公司、中国の阿邇貝司機電技術(上海)有限公司である。海外の日系企業等に対する生産設備等の据付業務及びメンテナンス業務並びに付随する人材サービスを提供している。経済のグローバル化が進展するなかで、グローバル事業の拡大は戦略軸の1つとなっている。

(3) 新規事業(農業・介護関連分野)
2018年4月には、新規事業分野への参入を目的に新会社アグリ&ケアを設立した。成長産業へと向かう農業関連分野、及び人手不足が顕著となっている介護関連分野に対して、新たなモデルの人材派遣市場を創出するところに狙いがある。これらの分野は、AIやIoT、ロボットなどの最先端技術の導入や外国人労働力の活用がカギを握ると言われており、これまで培ってきた高度な技術力と人材育成(外国人の採用を含む)のノウハウを生かせる領域で先行者利益を目指す戦略と考えられる。

3. 沿革
同社は、創業者の松井利夫(まついとしお)氏が「機電一体設計」をコンセプトとし、1968年に同社の前身である松井設計事務所として創業した。当時は、電気設計と機械設計が別々に行われており、そこから発生する様々な不具合を解決するために「機電一体設計」という独自で斬新な手法を顧客企業に提案していった。オイルショックを始め様々な困難に遭遇したが、不断の努力により「顧客の要請に応じて技術提供する」総合エンジニアリングアウトソーシング企業として顧客の評価を着実に高めている。さらに、現代表取締役社長の今村篤(いまむらあつし)氏のもとで、開発・設計などの上流工程に特化した人材の育成に注力し、新卒技術者の早期戦力化などで、業績向上・事業拡大を図っている。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 柴田郁夫)


<ST>
配信元: フィスコ

関連銘柄

銘柄名称 株価 前日比
2,701.0
(15:00)
+32.0
(+1.19%)
2,488.0
(15:00)
+63.0
(+2.59%)
4,440.0
(15:00)
+1.0
(+0.02%)