日プロ Research Memo(7):ソフトウェアで社会インフラ分野の安全・安心、快適・便利に貢献する

配信元:フィスコ
投稿:2019/02/19 15:17
■中長期成長戦略

1. 第5次中期経営計画の基本方針
第5次中期経営計画(2019年5月期−2021年5月期)では、中期経営ビジョンに「ソフトウェアで社会インフラ分野の安全・安心、快適・便利に貢献する」を掲げ、基本方針を獲得事業の主力化と新分野の開拓、持続的成長への投資、T-SES(トータル・ソフトウェア・エンジニアリング・サービス、同社の造語)の継続としている。

なお第5次中期経営計画の目標数値は公表していないが、目標とする経営指標には、売上高営業利益率10%、株主還元の指標として配当性向50%以上を掲げている。


自動運転・ADAS関連やIoT関連を主力事業化
2. 自動運転・ADAS関連やIoT関連を主力事業化
獲得事業の主力化では、自動車業界の技術革新を表すCASE(Connected=コネクテッド、Autonomous=自動運転、Shared=カーシェアリング、Electric=電動化)のうち「S」以外の「C・A・E」の分野に注力する。強みを持つ車載ネットワーク制御技術、近距離無線通信技術、パワートレイン系電動化対応技術、カメラやレーダーといった外界認識センサー技術などを融合し、自動運転・ADAS関連を主力事業として確立する。また前中計期間中に獲得した建設機械や医療機器などのIoT分野を、これまで培ったきた制御・組込技術を組み合わせてさらに拡大し新たな主力事業に育成する。

新分野の開拓では、AI・ディープラーニング、ネットワーク、セキュリティ、クラウドなどを注力分野として、AI画像認識・識別、AI基盤システム、ロボティクス、IoT建設機械クラウド基盤などに取り組んでおり、先行技術習得にも注力している。

こうした取り組みの成果で、2019年5月期にはADAS関連が40%増収、IoT関連が148%増収、AI関連が103%増収と大幅伸長する見込みだ。


人材育成など持続的成長への投資
3. 人材育成など持続的成長への投資
持続的成長への投資では、社員の安心・健康・快適・成長・やりがいなどの向上が、社員の定着・活力向上・生産性向上につながり、結果として会社の持続的な成長につながるという好循環を生み出すため、働きやすい環境づくりや人材育成など物心両面から持続的成長の基盤づくりを推進する。

具体的には、オフィスや設備など働きやすい職場環境づくりへの投資、開発・検証ツール導入など生産設備への投資、採用強化による技術者確保や技術力向上に向けた教育など人材への投資、奨学金返済支援制度の新設や年次有給休暇の計画的付与など働きやすい制度の強化を推進する。

なお開発リソースとなる人材の採用・確保では、中国のオフショア開発拠点IPD大連においても継続的に優秀な技術者を確保している。IPD大連の人員は2017年度末66名、2018年度末85名となり、2019年度末には100名に達する予定だ。2018年8月には社会インフラ分野の通信技術に強みを持つアルゴリズム研究所を子会社化した。

また注力分野への取組スピードを加速するため、外部企業との連携も強化する方針だ。2018年8月には社会インフラ制御分野の通信技術に強みを持つアルゴリズム研究所を子会社化した。また2018年11月には中国に続くオフショア開発拠点として医療画像処理技術を得意とするインドのTrenserと戦略パートナーシップを締結した。さらに国内で画像認識・識別技術やAIアルゴリズムを強みとするとともに、ベトナムにオフショア開発の拠点を持つトレンサーと業務提携を行うなど技術者の確保を推進している。


長期的視点でT-SESを継続
4. 長期的視点でT-SESを継続
長期的視点でT-SESを継続する。T-SESは「トータル・ソフトウェア・エンジニアリング・サービス」の略で、同社の造語である。長年にわたり培ったソフトウェアエンジニアリング技術をベースとして、ソフトウェアの要件定義、システム開発、構築サービス、検証サービスから運用・保守までをトータルにサービスすることにより、顧客に最大のメリットを提供することを表している。顧客を巻き込んだ中長期的な取り組みとして継続している。


CSR活動も積極実施
5. CSR活動も積極実施
コーポレートガバナンスの基本方針に基づき、CSR(企業の社会的責任)活動の一環として毎年税引き後利益の1%を寄付を実施している。前期末は2つの財団(公益財団法人SBI子ども希望財団、特定非営利活動法人日本紛争予防センター)に寄付を行っており、今後も継続的に利益の一部を社会貢献に役立てる方針だ。


業界で独自のポジションを確立、中期的に収益拡大・高収益化期待
6. 業界で独自のポジションを確立、中期的に収益拡大・高収益化期待
電力制御、鉄道運行管理、自動車パワートレーン制御・車載情報、リモートセンシング、防災など、安全・安心が重視される難易度の高い社会インフラ分野の制御システムと、情報家電、建設、医療など社会インフラを支える機器のよりハードウェアに近い領域の組込システムの開発で培った高品質・信頼性を強みとして事業展開している。急激な技術革新や人材難・採用難などIT業界を取り巻く環境が大きく変化するなかで、システム開発・ITサービス企業にとって開発リソースの確保や先端技術への対応力が課題となるが、同社は安全・安心が重視される難易度の高い社会インフラ分野の制御・組込システムなどの開発で、大手電機メーカーや特定優良顧客との強固な信頼関係を構築している。このため受注競合が少なく、売上高は小規模ながらシステム開発・ITサービス業界において独自のポジションを確立している。成長分野への取り組みを加速して、中期的に収益拡大・高収益化が期待される。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 水田 雅展)


<HN>
配信元: フィスコ