FOMC受けドル売り強まる ドル円は一時108円台に下落=NY為替概況

著者:MINKABU PRESS
投稿:2019/01/31 06:44

 きょうのNY為替市場は午後になってドル売りが加速した。FOMCの結果が公表され、声明から漸進的利上げの文言が削除され、バランスシート正常化を調整する準備があることも表明した。「辛抱強い」スタンスにも言及している。

 その後のパウエルFRB議長の会見でも、「利上げの論拠が幾らか弱まった。バランスシート縮小を終了する適切な時期を精査中」などと述べていた。「政府機関閉鎖が長引けば、GDPに影響するが、第2四半期には回復する」と景気に自信を覗かせている。今回のFOMCは市場の期待に満額回答した印象もある。

 朝方はドル買いが優勢になる場面も見られた。この日発表のADP雇用統計が強い内容だったことで、週末の米雇用統計への期待が膨らんだようだ。先日、クドロー米国家経済会議(NEC)委員長が、今週の米雇用統計に期待感を高める発言をしていた。また、好調な米企業決算も発表されており、米株が上昇していることもドルをサポートしていた模様。

 ドル円は108円台に下落し、ストップを巻き込んで一時、108.80円付近まで下落。21日線を下回る場面も見られたものの、21日線付近まで戻した。明日以降、109円台が上値抵抗となるか警戒される。

 FOMCを通過し次は、きょう明日の米中貿易協議が注目される。中国の劉鶴副首相がワシントンを訪問し、米通商代表部(USTR)のライトハイザー代表やムニューシン米財務長官と協議を行う。米側は中国側の構造改革や知的所有権保護を求めている。これに対して、中国側は米国からの輸入増加により貿易赤字解消を目指す姿勢を強調するものと思われる。具体的な工程表を提示するとの報道も伝わっていた。完全な合意には至ることはないと思われるものの、一定の進展が見られるか注目される。

 ユーロドルは一時、心理的節目の1.15ドル台に上昇。しかし、滞空時間は短く直ぐに、1.14ドル台後半に伸び悩んだ。1.15ドル台の上値抵抗は強いようで、ドル安がユーロドルを押し上げてはいるが、ユーロ自体になお強さがない印象。ユーロ圏の指標が弱い。欧州委員会が発表した1月のユーロ圏景況感指数はオランダ、イタリア、ドイツが低下し、2016年11月以来の低水準。ユーロ圏全体やフランスの10-12月期のGDP速報値も発表になっており、予想範囲内ではあったものの、前年比で伸びは1%を下回っている。「黄色いベスト」抗議行動の影響が大きかったようだ。

 また、事前に観測報道が伝わっていたが、ドイツ政府は2019年の成長率見通しを従来の1.8%から1%に下方修正している。外部環境からの逆風が増しているという。更に、この日発表のドイツの消費者物価指数(HICP)速報値もインフレの傾向は示されていなかった。

 ドラギECB総裁は先日、「景気見通しのリスクバランスは下向きに移行。大幅な金融緩和が依然必要」と言及し、市場ではECBの年内の利上げ期待を後退させているが、きょうの指標はそれを正当化させる内容ではあった。

 ポンドドルはFOMCを受け1.3145ドル付近まで急速に買い戻された。前半は軟調な動きが続き、1.30ドル台半ばまで下落。200日線が1.3045ドル付近に来ているが、その水準をうかがう展開も見られていた。

 前日の英議会の投票では、離脱期限の延長は否決されたものの、合意なき離脱の阻止とEUとの再交渉の修正案は承認された。引き続きメイ首相がEUと交渉することも了承されている。ただ、EU側からは当然不満が多く、再交渉はしないとの姿勢に変化はない。ポンドはこれまで、最低でも英議会は、合意なき離脱は回避するとの期待から買い戻しが膨らんでいたが、英議会の投票を通過して新たな局面に入ったものと思われる。EU側は既決のバックストップ案が最善と考えており、合意なき離脱は回避したいが、場合によっては可能性は排除しないなどと述べている。情勢はなお、混沌としている状況と見て良いであろう。

minkabu PRESS編集部 野沢卓美

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