エノモト Research Memo(7):真似のできないものづくりを追求

配信元:フィスコ
投稿:2018/12/14 15:07
■中期経営計画

1. 中期経営方針
エノモト<6928>は、2017年3月期から2021年3月期までの5年間の、事業運営の指針となる中期経営計画を策定している。中期経営方針として「新たな価値の創造~他社が真似のできないものづくりを追求する~」を掲げ、同社が培ってきた技術力を最大限に活用し、さらに上のステージへ踏み出していくための決意を込めている。そのため、年度ごとに経営重点テーマを設定しており、2017年3月期は旧来の方法にとらわれない「現状打破」、2018年3月期は従前の思考・体質から踏み出す「勇気」、そして2019年3月期は自信を持って自分の力を発揮する「底力」——を掲げている。大きな中間目標でもあった東京証券取引所1部上場は達成し、それに伴う経営基盤の盤石化も進展していることから、そろそろ新たに中期目標を掲示するタイミングかもしれない。基本的には経営基盤の盤石化は変わらず、その延長で強みを伸ばし弱みを補うということになりそうだが、1部上場企業としてはもう少し先の将来を見通して、人材育成・確保や他社連携、新規事業なども視野に入れる必要がありそうだ。


各製品群とも中期成長余地は広がりそう
2. 中期成長イメージ
中期的には、産業機械やサーバー向けなどIoT需要の増加や、EV(Electric Vehicle)・自動運転技術などを視野に入れた自動車の電装化率の上昇を背景に、IC・トランジスタ用リードフレームの市場は成長が見こまれる。オプト用リードフレームの市場は、2020年の東京オリンピック・パラリンピックへ向けてインフラなど大型設備投資の増加が予測されている。コネクタ用部品の市場は、スマートフォンの爆発的な伸びがなくなって徐々に買い替え需要へシフトしていくとの予測から、スマートフォン向け部品の需要変動が大きくなる可能性がある一方、車載用大型コネクタ部品の需要は順調に拡大する見込みである。加えて、新たにスマートウォッチなどウェアラブル向けの需要が期待できる。こうした製品に利用される、実用としては最小クラス0.3mmというコメより小さい微細なコネクタを、継続的・安定的に数1000万個~1億個のロットで生産できるのは、同社を含めて日系数社しかいないもようである。超精密化など機械・機器の技術的要求は今後ますます高まるばかりなので、対応できない企業が増えるなか、同社の中期的な成長余地は大きな広がりを見せている。


燃料電池の基幹部品を研究開発
3. 「ガス拡散層一体型金属セパレータ」
どの会社もそうであるように、同社も新規事業のシーズをいくつか抱えているものと思われる。その中でPEFC(固体高分子形燃料電池)用の新型の「ガス拡散層一体型金属セパレータ」の開発に期待がかかる。山梨県及び山梨大学との共同開発で、2020年の実用化を目指している。これまでの経緯は、2014年7月に「水素社会に向けた『やまなし燃料電池バレー』の創成」事業に参画、山梨県及び山梨大学との産・官・学共同事業をスタートさせた。2015年2月に新型セパレータの開発に成功。2017年7月には「地域イノベーション・エコシステム形成プログラム」(文部科学省支援施策認定取得)の認定を受けた。

セパレータとは水素と酸素の化学反応を利用して発電する燃料電池スタックの基幹部品のことで、同社は、山梨大学の理論に基づいてセパレータの小型化・低価格化を推進している。現在、汎用ステンレス材にカーボンを主成分としたコーティングを施し、高耐食性を実現、さらに、ガス拡散性に優れたカーボンペーパーに代わってセパレータ自体に廉価なガス拡散層とガスケットの機能を併せ持たせることで、部品点数の削減や薄膜化を実現した。実用化に向けて現在、量産技術の確立や製造コストの削減、生産品質管理体制の構築を進めているところである。実用化すれば、燃料電池車や家庭用燃料電池など社会生活などに広範に利用されることが見込まれ、「エネルギー革命」と言ってよいほどのインパクトを社会に与えることが予想される。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 宮田仁光)

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配信元: フィスコ

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