「JINUSHIビジネス」で飛躍
日本商業開発
(名証2部・3252)
代表取締役社長
松岡哲也
日本商業開発(3252)は自らが土地を買って、テナントを誘致し事業用定期借地権により土地だけを賃貸、当該テナントに建物を建ててもらい借地収入を確保したうえで、その土地を不動産利回り商品として投資家に売却する「JINUSHIビジネス」をメーンに事業展開を行っている。低リスクで長期安定収益が見込める同社の不動産投資ビジネスが評価され業績拡大と連動するかたちで株価は昨年から上昇基調を続けている。松岡哲也社長に現況と今後の戦略を聞いた。
土地だけの投資で長期安定収益を確保
──不動産投資の世界では、土地と建物をセットで投資するのが一般的とされています。その意味で底地(借地権つき宅地所有権)のみを投資対象とした御社のビジネスは2000年の設立当初は斬新だったと思います。会社を設立したキッカケを教えてください。
「私は前職の兼松都市開発時代に商業施設の開発を担当しており、そのノウハウを生かし現在の会社を立ち上げました。不動産ビジネスは①建物を貸すビジネス②土地建物を売るビジネス③土地建物を管理するビジネス④これらの売買や賃貸を仲介するビジネス―の4つに大別されますが、当時は土地だけを貸すビジネスは存在しませんでした」
──当時、存在しなかったビジネスを立ち上げるには相当なご苦労があったと思います。
「土地だけを貸すビジネスを始めるうえで大きなキッカケとなったのが、1992年の借地借家法の制定で定期借地権制度が創設されたことです。事業用借地権という新たな賃貸方式ができたことにより、土地所有者には貸した土地が必ず返還されることになりました。これにより20年間の事業用借地権を設定し、当該土地から長期にわたる安定的な収益が見込めることが可能になりました。コストは固定資産税と都市計画税だけで追加投資は不要です。劣化していく建物には投資しませんから、不動産投資のなかでもこれ以上安全な投資手法はないといえます。当社はこれをJINUSHIビジネスとして底地を運用できる市場を新たに立ち上げましたが、新規性があまりにも高いため、これを受け入れてもらうまでに10年程度の歳月がかかりました」
大手企業の年金運用など新規案件獲得
東証上場に意欲
──JINUSHIビジネスの強みを具体的に教えてください。
「運用する底地に関しては日本国内の人口20万人以上の中核都市を対象とし、食品スーパーなどのテナントを誘致します。建物に対してはテナントが投資するため退去リクスが低く長期的に安定収益が見込めます。定期借地契約の期間満了後は土地が更地で返還されます。テナントが仮に撤退しても、新たに別のテナントに土地を賃貸したりしますが、不可能の場合はマンションなど住宅用地として売却できるような魅力的な底地を投資対象として選定しています」
──JINUSHIビジネスの立ち上げ当初は、これを顧客に理解してもらうためにご苦労されたと思いますが、好調な業績を見ていますと、かなり浸透が進んでいるようですね。
「大手企業オーナーの資産管理会社での運用やREIT(不動産投信)での採用などで実績を積み上げてきました。多くの不動産投資は、当初計画通りに運用が進まない事例が多いですが、JINUSHIビジネスは当初計画通り安定した運用を続けてきており、これが浸透してきました。また、企業年金の運用に新規採用してもらうことは、極めて高いハードルですが、プレゼンテーションの資料をダイレクトメールで送るなど運用担当者への地道な活動を続けてきました。これにより現在では、大手企業の年金運用でJINUSHIビジネスの商品も採用され長期的に安定した運用手法としてニーズが高まっております」
──御社の地元である大阪や東京など大都市圏での底地を投資対象とされてきましたが、今後は他の地域へも進出の計画はありますか。
「今後も人口20万人以上の中核都市を投資対象にJINUSHIビジネスを展開する予定です。国内の人口減少が危惧されていますが、地方から都市部への人口流入は今後も続くことが予想されます。名古屋を含めた三大都市圏に加えて仙台や福岡などへの展開も考えられます。加えて将来的には北米や豪州など海外展開も目指していきたいと思います」
──運用に対するニーズは高まっていると思いますが、今後の見通しを教えてください。
「大手企業の年金運用で2社、大手アセットマネジメント会社との私募ファンドでの運用で2件が年内に新規のJINUSHIファンドとして立ち上がる予定です。機関投資家の資金運用ニーズの高まりに対応すべく魅力ある底地の開拓も積極的に進める方針です」
──最後に株主還元策についてお聞かせください。
「半年ごとに全国共通お食事券ジェフグルメカード3000円(年間6000円分)を贈呈する株主優待制度を新設し評価をいただいております。今後は東証への上場を目指して株主へのご期待に応えていきたいと思っております」
◆日本商業開発の会社概要
テナントによる商業施設建設を前提に底地を取得し賃料収入で長期運用する「JINUSHIビジネス」で安全な不動産投資を提案している。松岡哲也社長が2000年に創業し、7年という短期間で名証2部への上場を果たしている。地元の関西地区では阪急オアシス高殿店を筆頭に数々の商業施設を誘致、今後は首都圏を含めた人口20万人以上の中核都市での底地取得に意欲を見せる。大手企業オーナーの資産管理会社やREIT(不動産投信)から大手企業の年金運用、また機関投資家の運用資金と拡大している。
JINUSHIビジネスとして手掛けている「阪急オアシス高殿店」
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