sMedio Research Memo(7):2018年12月期通期は業績回復の1年。収益モデルの維持拡大で黒字確保へ

配信元:フィスコ
投稿:2018/03/20 15:37
■今後の見通し

1. 2018年12月期の通期業績見通し
sMedio<3913>の2018年12月期の連結業績予想は、売上高が1,134百万円で前期比7.4%増、営業利益が18百万円(前期は60百万円の営業損失)、経常利益が14百万円(前期は61百万円の経常損失)、親会社株主に帰属する当期純利益が6百万円(前期は141百万円の当期純損失)の見通しである。開発収入とサブスクリプション収入による増収効果と販管費の節減で黒字転換を見込んでいる。

国内のPC出荷台数は長期的に低迷しており、同社のワイヤレス接続技術を核とした既存事業によるロイヤリティ収入は前期に続き低調を予想している。その一方、2018年12月に始まる衛星放送波の4K/8K放送に関連する受託開発案件などでの受託開発収入の増加などを見込み、売上高合計では増収を予想している。

経費面においては、前期に損益悪化要因となった以下の項目の改善で、経費削減となることを見込んでいる。1)2017年12月期に情報スペースののれんを全額償却したことで、2017年12月期ののれん償却費負担(14百万円)がなくなる、2)2017年12月期の本社移転費用(16百万円)がなくなる、3)台湾支店での開発業務を上海の子会社に移管し、海外の開発体制の見直し・費用効率化を図る。また、保有外貨預金の圧縮などにより、2018年12月期も為替相場変動に対する影響度は軽微になるとみており、経常利益は営業利益を若干下回る水準で見込んでいる。

同社では、2018年12月期については業績回復を図る1年として位置付けており、まずは最終黒字を確保することが目標となる。そのためには、低迷するロイヤリティ収入をいかに維持向上するか、また新しい収益モデルの拡大をいかに加速させられるかが大きな課題である。従い、後述する重点施策・成長戦略の確実な推進によって、どこまで売上高を拡大できるかが通期計画達成のポイントとなる。

2. 2018年12月期の重点施策・成長戦略
同社は、2017年12月期の業績不振に伴い、従来掲げていた2020年までの中期計画目標を撤回し、2018年12月期を業績回復の1年という位置付けにした。中期計画で描いていた基本的な成長戦略方針は継続するが、目標数値については一旦撤回し、この1年間の業績動向によって目標設定を見直すということである。

同社が現在抱えている最大の課題は、1)新規の収益モデルの拡大に予想以上に時間を要しており、この加速が必要であること、2)ロイヤリティ収入/開発収入が予想以上に急速に鈍化しており、可能な限り維持向上を図ること、である。そのために、2018年12月期は以下の重点施策・成長戦略を推進するとしている。

(1) ロイヤリティ・開発収入拡大に対する戦略
“4K/8Kの高解像度画像”、“放送とネットワークの融合”市場に自社コア技術を投入し、ロイヤリティビジネスの新たな成長エンジンに位置付ける。

同社では、この提供サービスを「sMedio高解像度ソリューション」と呼び、適用する要素技術は、4K/8K画像処理技術/AR・VR技術、4K/8Kブラウザ・ハイブリッドキャスト表示技術、4K/8K高解像度VODプレイヤー技術である。

2018年12月1日から開始される新4K/8K衛星放送を大きな機会と捉え、対応デジタルTV、レコーダー(STB)向けのソフトウェアの開発・販売を展開していく。具体的なsMedio製品としては、新4K/8K衛星放送録画番組の再生プレイヤー「Valution UHD-BDAV」、組込ブラウザ「tourbillon」、ハイブリッドキャストブラウザ、がある。

2018年12月期は、実用放送開始に向けて、キー顧客向け開発に注力し開発収入の拡大を図る。既に複数プロジェクトの受注・内定済みで、開発に着手しているとのことである。また、2019年以降は他社にも展開し、ロイヤリティ収入への貢献が期待される。

4K/8K衛星放送の実用放送の開始スケジュールが決まったことや、2020年開催の東京オリンピック・パラリンピックが迫ってくることで、今後は該当市場の拡大も加速することが予想される。同社にとって、今後の開発収入・ロイヤリティ収入の1つの柱としての位置付けに成長することが期待される。

(2) サブスクリプション・運用サービス収入拡大に対する戦略
a) AIを新たな成長エンジンとしたサービスの展開にシフト
“モノのAI化”、“AIファンデーション”などAIの技術に関連して成長するものが、今後の有望技術として数多く予想(「ガートナー戦略的技術トップ10」2017年10月26日発表)されている。同社では、2017年12月期に富士通との共同開発で商用化した画像解析AIエンジンを「sMedio AI Technologies」として販売開始した。2018年12月期は、さらに、画像解析AIエンジン製品ラインナップ拡張とスケーラビリティ化やクラウド型スマートソリューション開発、クライアント型軽量化、エッジ対応などを行い、高付加価値サービス「sMedio Smart Solutions」として提供を開始する。これによって、関連売上を2017年比で230%増を目指す。2019年以降は、さらに他社ソリューション連携などを図り、2017年比で450%増を目指す。

b) 海外大手ベンダーとの協業によるサービス収入の拡大加速
他社製品の再販と連携による品ぞろえの強化による加速を行う。既に2017年11月に、台湾Acerグループのデジタルサイネージ部門であるAcer Being Signageとパートナーシップ契約を締結した。両者の強みを生かし、高度な要求にも対応できるデジタルサイネージ・スマートリテールソリューションを今後提供していく。

ここでも、同社の従来から有する、マルチメディア・ワイヤレスコネクティビティ技術、AI・IoT・クラウド製品群(特に画像解析AIによる顔認識、動体認識ソリュー ション)の自社ソリューションと、Acerグループの有するハード・ソフト開発ノウハウや先進のデジタルサイネージ技術などとの連携で、「sMedio Smart Solutions」として製品展開を図っていく。

従来、同社の収入の主力となっていたロイヤリティ収入が今後低迷することが予想されるため、長期的にはサブスクリプション・運用サービス収入を、大きな柱として拡大させていく必要がある。今後の成長戦略として、同社が掲げた「sMedio Smart Solutions」は、従来のsMedio IoT Solutionに、デジタルサイネージやAI技術を組み合わせて、より幅広いソリューション提供を可能とするものになる。戦略の方向性としては、特に従来路線から転換しているわけではないが、今後はいかにスピードを上げて実績に結び付けていけるかが求められる。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 山田 秀樹)

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