105円の攻防戦

著者:菊川弘之
投稿:2018/03/07 17:34

政治ファクター主導の相場展開へ

 トランプ大統領の経済顧問トップで、元ゴールドマン・サックスCEOのゲーリー・コーン国家経済会議(NEC)委員長辞任ショックで、本日の東京市場は始まった。
 昨晩の米国株は続伸したが、本日の日経平均は反落。朝方から進んだ円高ドル安を嫌気した。
 
 3月は政治イベントが多く、マクロ経済指標よりも、政治ファクターがマーケットに大きく影響を与えそうだ。米国では6日のテキサス州を皮切りに、11月の中間選挙候補者を決める予備選が始まる。米国が「選挙モード」入りした事での波乱の一つが今回のコーン辞任であろう。

 ドル円は、心理的節目105円の攻防戦。同水準を割り込むと、一時的にテクニカル的な売りが加速するかもしれない。V=103.14円、N=102.94円などが下値ターゲットとしてカウント可能だ。株価も下落が加速するようなら、週末の雇用統計が強気の内容であっても、3月の利上げ観測が後退するリスクもあろう。

 ドル円の105円の攻防と共に、コーン辞任を受けた今晩の米国市場の株価の反応も注目だ。

 105円割れで下げ加速した方がアク抜けするとの見方もあるが、105円で支えられての反発でも、割り込んでからの反発でも、中間選挙年と言う特別な年において、貿易問題はトランプ大統領にとっても譲れないと思われ、今後の政治イベント・スケジュール感を考慮すると、ドルの戻りは限定的となろう。

 北朝鮮問題は一旦、4月後半の南北首脳会談までは、持越しの様相だが、5月中旬から米韓合同軍事演習が再開される予定だ。 北朝鮮の核放棄・弾道ミサイル開発中止がなければ、軍事オプションの可能性は残る。その頃には、中国では全人代が、ロシアでは大統領選挙がそれぞれ終わり、新たな強い体制が始まる。

 5日にイスラエルのネタニヤフ首相とトランプ大統領が会談したが、5月の米大使館のエルサレム移転に合わせイスラエル訪問を検討していること明らかにした。首脳会談では2015年のイラン核合意の見直しと、イランのシリア情勢への関与を巡る懸念も優先議題として協議された。米政府は制裁再開の是非を120日ごとに米議会に報告するよう義務づけられており、次の期限は5月となる。

 5月~6月は、地政学リスクが急速に高まる時間帯となろう。ロシアゲートの調査報告が春にも行われると言う観測もある。今年の春相場は荒れそうだ。
菊川弘之
日産証券調査部 主席アナリスト
配信元: 達人の予想