【あすなろ投資顧問】連載コラム(相場展望)を特別公開②◆加藤あきら◆ 

著者:加藤あきら
投稿:2018/01/04 13:20

加藤の相場展望<番外編 2 > 

*当コラムは先だって1/3 15:00にあすなろ投資顧問サイトにて公開されたものになります。

以下


新年明けましておめでとうございます。

2018年は戌年にちなんで相場格言は「戌笑う」と申しますから、
しっかりと準備して強気相場に臨んでいきましょう。

本日は個別銘柄へと落とし込んで2018年の有望セクターおよび注目のテーマなどをみていきたいと思います。

また、おさらいですが日本市場については<特別公開①>でも取り上げたように需給面が良好であることが何よりも株高に対する追い風になると考えています。

特に海外投資家の買い意欲は旺盛であることに変わりはなく、年末高に対して売りから入ることになったとしても国内政治の安定と企業業績などのファンダメンタルが良好な市場は群を抜いていると考えられます。

さらに、テクニカル面でも長期スパンでの上昇トレンドに入ったことでまさに米国市場にひけを取らない市場環境が用意されていると言えます。

早速、1月の通常国会開幕に伴い人口減少、高齢化進展を逆手にとった“働き方改革”の関連法案が審議されます。同改革改め“人づくり革命および生産性革命”は「人生100年時代構想会議」、「未来投資会議」を通じて、さらに進化した目玉政策として2018年も超人手不足社会の問題解決を推進する政権の屋台骨になることと思われます。

国内政治の安定こそが海外投資家を惹きつける前提となり、株価の先行きを占う重要なファクターとなります。勝負どころは9月の「自民党総裁選挙」と「憲法改正発議」の市場反応になると思われ、いずれも安倍政権の基盤が盤石であれば憂いは無いと言えるかと思います。

そうした市場環境の下に照準を合わせて物色されるのが日本のお家芸とされる微細テクノロジーの分野になってくるかと思われます。2017年はロボット、IoT、センサーをはじめ、仮想通貨、EV、自動運転、全固体電池、量子コンピューター、半導体など多岐に渡ってテーマ物色が活況となりました。

元をたどれば2016年に注目されたAIやバイオ、クラウド、働き方改革などから派生する技術や素材を材料としたものであるとも言え、さらなる百花繚乱の様相となってくるかと思います。

こうした中で、全ての材料を追いかけて迷走してしまうよりもある程度テーマを絞って集中投資しながらリスク管理に軸足を置くのがよいと考えます。また、その際の注意点としては領域内における技術やシェアのトップ企業もしくは一番手企業に付くのが鉄則です。ただし、値がさ株より出遅れの中低位株の妙味が増してくるかと思われます。


【注目セクター】
・人材−超人手不足時代に技術人材の価値向上
国策の目玉にあげられる「人手不足」や「人づくり革命」のキーワードは色あせることなく、むしろ深刻化しています。これを背景に人材サービス需要は拡大基調が続くとみられます。1人あたりの労働生産性向上のために作業を効率化させることはあらゆる業界の課題と言えるかと思います。

・機械−省人化で注目、IoTでモノ作り効率化
「人手不足」解消を錦の御旗として産業界ではあらゆる業界で省人化が図られていく流れは変わりません。むしろ成熟産業の中でこそイノベーションが求められる時代に突入したと言えます。今後は“つながる”モノづくりがより進化してFA(ファクトリーオートメーション)の生産システムの上にIoTやAR、協働ロボット、3Dプリンターなどの技術融合が進展していくものと思われます。

・半導体/電子部品−AI進化で車載向け需要やAIスピーカーの普及期を迎える
2018年は1月に開催される「CES(家電見本市)」に集う米大手3社(エヌビディア、インテル、クアルコム)の動向が台風の目となることは間違いありません。いずれも2017年までの間で世界の各メーカーと技術資本提携や大型M&Aで脚光を浴びました。

GPUなどの高機能半導体をはじめ先端エレクトロニクスの技術分野はAI(人工知能)の進化により、人にしかできなかったことを機械にも可能にする技術開発競争が本格化しています。従来のテクノロジーの塊であるスマホから車載向けHUD(ヘッドアップディスプレイ)や音声対話を次世代のインタフェースとするAIスピーカー、ヒアラブル端末への応用が進み、米デジタルの巨人であるフェイスブック、アマゾン、アップル、マイクロソフト、グーグルなどが熾烈な競争を繰り広げるでしょう。

・バイオ−再生医療の研究が加速
京都大学の山中伸弥教授がiPS細胞(人工多能性幹細胞)を発見して10年近くが経過し、ヒトの細胞が持つ再生能力を利用する再生医療をはじめ、難病や希少疾患などへの新しい治療法確立に向けた研究開発も加速しています。人間の死因順位の1位と2位は癌(悪性新生物)と心疾患です。癌細胞を溶かすウイルス製剤をはじめ、これらを克服する薬や治療法が生み出され、心不全を防ぐ医療デバイスが続々と登場しています。さらにはDNA配列型が組み変わる仕組みを利用したゲノム編集の技術は医療分野だけでなく、農林水産分野、化学分野などからも研究が進められています。

・最新素材−日本のお家芸とも言える微細技術は産業分野でも花開く
日本が世界に誇れる微細技術の代表格にあたるのが「カーボンナノファイバー(炭素繊維)」です。炭素繊維の鋼鉄と比べた比重は4分の1と極めて軽量にもかかわらず、強度は約10倍あり、さらに錆ることがなく耐熱性も高いなどの優れた特質を持っています。炭素繊維を加工し、耐震補強に用いられるなど技術応用も進んでいます。

さらに、こうしたナノテクノロジーの最前線にくるのが、「セルロースナノファイバー」の開発で、バイオエコノミー時代の到来を象徴するものとして注目されています。セルロースナノファイバーは、木材の繊維をナノサイズにまで微細化したバイオマス素材で、鋼鉄と比べた比重は5分の1とさらに軽量で強度は5倍、さらに耐熱性もガラス並みであることから、炭素繊維やガラス繊維の代わりになる他、宇宙産業の盛り上がりでも注目が高まっているのです。

これらの研究開発が進展する背景にあるのは化石燃料の多用がもたらす環境問題の課題解決で、自動車や航空機などの輸送機器の軽量化が進むことによって石油資源の省エネルギー化が期待されているのです。ちなみに、バイオテクノロジー分野における最新の取り組みではタンパク質でできた人工クモ糸の開発で、繊維製品だけでなく衣料品や自動車部品などの工業製品に応用が図られています。こちらも強度は鋼鉄を上回り、ナイロンよりも伸縮性があり、耐熱性も300℃を超えるというから驚きです。


【注目材料】
・仮想通貨
仮想通貨がもてはやされる背景には、世界の潮流に「キャッシュレス化」があります。良くも悪くも日本は現金主義が根強く、キャッシュレス決済比率は極端に低く後進国となっています。その一方で、仮想通貨市場における日本人投資家(投機家?)のプレゼンスが高いことは皮肉と言わざるを得ません。徐々に仮想通貨の種類が増え、小さな経済圏が乱立します。ICO(イニシャル・コイン・オファリング)と呼ばれる仮想通貨での資金調達が次々と実現しており、同スキームの対象となった≪メタップス≫が提供する時間取引所サービス「タイムバンク」も注目です。資本市場における仮想通貨の位置づけがどのようになるのか、2018年は殊更に注目しておく必要がありそうです。

・データ取引市場
ビッグデータが市場テーマとしてはやす動きがあったのも今や昔、データ自体が新たな価値を持つようになっています。企業間だけでなく、個人と企業の間でもデータを売買する市場が整備されつつあります。同取引を仲介する新興ベンチャーや≪データセクション≫が設立に関与した日本データ取引所などの存在感が増してくることが予想されます。

・民泊新法施行
「住宅宿泊事業法」が6月に施行されるとあって、旅行者が一般住宅や古民家などに泊まる民泊がいよいよ本格化してきます。訪日外国人は今や年間3000万人到達が現実味を帯びてきており、2020年の4000万人目標も十分視野に入ってきたと言えます。民泊仲介サイト運営の米Airbnbに後塵を拝すまいと楽天&LIFULLなど国内勢も事業整備を急いでいますが、米Airbnbが格安航空会社のピーチ・アビエーションと提携したように地方のインバウンド消費が活性化しそうです。地方自治体の条例上乗せ規制が懸念されていますが、いずれにしても旅行・消費の比較サイトなどは恩恵を受けることになるでしょう。

・金融規制(ボルカー・ルール)緩和
米FRBイエレン議長はFOMC議事要旨の中で現在の金融規制についても言及しています。各国が推進してきた低金利政策は銀行の収益を圧迫し、金融機関が抱えるリスクに応じて規制内容を調整することを検討しています。中でもリーマンショックの引き金となった金融機関の高リスク取引を禁じたボルカー・ルールは非常に複雑で銀行の手足を縛りつけるものであるとして、多少の規制緩和に乗り出す可能性もありそうです。そうした場合には北米で事業展開するメガバンクには収益の改善余地が生まれるほか、債券市場に集中しているマネーが解き放たれることになるかもしれません。


【2018年のイチオシ銘柄】
華々しい市場テーマが乱舞する中でどれが本命テーマとなるかの予測は甚だ難しいことであると言わざるを得ません。これまでの流れから既存のテーマ物色が隆盛する一方で着々と新テーマが産声をあげており、それらが代わるがわる物色されることになるでしょう。

おそらく年初の注目テーマで最たるものは、「RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)」「次世代電池」「AIスピーカー/ヒアラブル端末」「ICO(イニシャル・コイン・オファリング)」に関連したものになってくるかと思います。

また、2017年後半ではIPO(株式新規公開)銘柄が活況で、新旧それぞれが旬のテーマを彩っていることからも材料物色の流れを色濃く引き継ぐ流れも想定されます。


2017年に26年ぶりの高値へと導かれた日本市場は息を吹き返しました。そして、さらなる相場上昇への機運が高まっている2018年こそは勝負の年でしょう。


【 人 生 の 格 言 】
『相場は悲観の中に生まれ、懐疑の中で育ち、楽観の中で成熟し、幸福感の中で消えていく』(アメリカ著名投資家 ジョン・テンプルトン)

それでは、明日に希望をつないで慎重にかつ大胆に取り組んでまいりましょう。


執筆:加藤あきら


配信元: 達人の予想