【あすなろ投資顧問】連載コラム(相場展望)を特別公開①◆加藤あきら◆ ]

著者:加藤あきら
投稿:2018/01/02 10:29

加藤の相場展望<番外編 1 >  

*当コラムは先だって1/2 9:00にあすなろ投資顧問サイトにて公開されたものになります。

以下


新年明けましておめでとうございます。

2018年は戌年にちなんで相場格言は「戌笑う」と申しますから、
しっかりと準備して強気相場に臨んでいきましょう。

また、激動の「平成」は泣いても笑っても今年が最後です。
バブル崩壊で始まった「平成」はデフレ脱却に30年間もの時を費やしましたが、
再び復活の瞬間を今かと今かと待ちわびながら強烈な輝きを放ち始めました。

きっと日本の未来は明るい!そして日本株の展望も明るい!?

日本株が一際強い光を放つと噂される2018年、
平成を締めくくる今年の相場を引っ張るのはどのセクターになるのか?
注目材料は?
注目のテーマは?
そして、大相場を演じる可能性のある銘柄は?

気になるニュースを総ざらいして今年の相場展望を描いていきたいと思います。

まずは全体感の把握が何よりも重要でしょう。

【2018年の世界経済は好調が継続】
2018年の世界経済は緩やかな成長が継続する見通しであることが大勢を占めています。
日米欧が協調して金融緩和したことで低金利環境が世界中で広がりを見せ、2015年のチャイナ・ショックから中国の景気は立ち直りから拡大へと向かい、2016年の原油ショックはOPECの協調減産などで価格は60ドル台まで回復しました。
株価は史上最高値を更新する国が30か国以上にのぼり、先進国、新興国ともに好調に推移すると予想されています。

ここで、相場の大前提にあるものをおさえておかなければなりませんが、株価の先行きを占うにはマクロ経済と国際政治の動きはやはり切り離すことができないと思われます。

2017年は話題の“過熱感なきゴルディロックス(適温経済)”と揶揄される中、カネ余りを背景とした世界同時株高と様々な商品、仮想通貨までにも投機マネーが流れ込みました。おそらく2018年はこのリスクマネーの動きが加速するであろうとみられています。
ただ、特に仮想通貨は凄まじい急騰で過大評価の代名詞とも言える程でしたので、バブルの芽になり得ないか注視しておく必要がありそうです。年初の懸念点は仮想通貨の相場が波乱要因になる可能性を指摘しておきたいと思います。

【カギを握るのはやはり米国】
世界経済の潮流を予測するにあたり欠かせないのはやはり米国の動きです。
中でも、昨年末に成立した『税制改革法案の実効性』と今秋に控える『米国の中間選挙』がカギになってくるかと思います。
年初にもたつく場面があるとすれば押し目買いのチャンスと言えるかと思いますが、年後半においてはNYダウが最高値をつけて水準を下げてくるようであれば値幅と日柄をみながらの取り組みに切り替えていく必要が出てきます。

【2018年のスケジュール】
さらに、2018年の先行きを占う上で重要となるイベント、スケジュールは常に意識しておかねばなりません。

目先では2月に米FRBイエレン議長の任期満了、そしてパウエル新議長が就任します。イエレン議長は確かに金融政策の正常化へと歩みを進めました。米国の金融政策の舵取りにおいて大きな変更点は無いものと思われますが、今後、FRBが経済見通しを上方修正するような状況に至れば、利上げ回数が3回→4回に増えるとの期待につながり、ドル円で120円超えのチャンスが見えてくるかもしれません。

3月にはイタリア総選挙があります。
EUはこのイベントの他にはブレグジット協議くらいしかリスクの種は見当たらなそうですが、足元でドイツの連立交渉がとん挫したり、スペインのカタルーニャ州独立問題などがこじれたりしています。沈静化したとはいえ、根底にあるポピュリズムに火が付くと、いつぞやのギリシャ債務危機のようにCDS(クレジット・デフォルト・スワップ)上昇で一気に金融危機のリスク要因に再浮上する可能性には留意しておきたいところです。

4月は黒田日銀総裁の任期満了があります。個人的には信念と執念の黒田総裁にはぜひとも続投してほしいと思っています。

6月はサッカーファンにはたまらないロシアW杯がありますね。ロシアでは3月に大統領選挙がありますが、プーチン現大統領が続投する可能性が高いと言われているので飛ばしました。共産主義の旗手であるロシアも立場はあるでしょうが、北朝鮮を裏で操るプーチン政権にはできるだけ穏やかにしておいてもらいたいです。。。

9月は未だ記憶から消し去ることのできないリーマンショックから10年が経過する他に、北朝鮮の建国70周年記念日がありますので、やはり警戒しておくにこしたことはありません。深刻な金融危機は10年毎に訪れると言われることから市場関係者も神経質になりやすいのではないでしょうか。

そして、なんといっても11月には米国の中間選挙があります。これが2018年最大の関心事になるであろうことは容易に想像がつきます。世界経済のけん引役である一方で、混乱の火種でもあるトランプ政権に審判が下されます。仮に共和党が敗北して議席を減らすようであれば政策運営において停滞する懸念が高まりやすく、市場の波乱要因となってきます。

そして、1年間を通してはやはり地政学リスクが横たわっていることへの備えを怠ることはできません。
その筆頭が北朝鮮をめぐっての米中2つの大国の思惑になるかと思われますが、他にも中東情勢や欧州の難民・移民問題など解決どころか多極化している点には注意を払っておく必要があります。

【米国を中心に適温経済と緩和マネーの動きを探る】
こうして見ていくと、なんとも不透明要因の多い世界情勢ではありますが、先に述べたように大前提を見失わないことが大事になってきます。

つまり、ゴルディロックス相場の持続性と膨大な緩和マネーの行く先です。

2017年は世界株高だなんだと言いながら、バブルに最も近かったのは債券市場だったように思われます。2016年から2017年にかけて債券のボラティリティが拡大したのは記憶に新しいところです。今この債券市場に溜まりに溜まったマネーが溢れ出始め、リスク資産に流入し始めた段階と言えるかと思います。

この流れが徐々に加速していくようになるのはむしろ必然であり、これを各国の金融当局者が適切にコントロールできるかどうかがゴルディロックス相場の持続性を左右するものになることと思われます。

私が日々担当させていただいている『加藤あきらの投資戦略室』の中で、株式市場の動向だけでなく他の金融市場の話題についても取り上げるのは、株式投資におけるリスクの種は株式市場というよりもむしろ他市場から持ち込まれる可能性が高いと考えているからに他なりません。

2018年の株式市場は世界の景気拡大や企業の業績向上の恩恵を受けやすく、ファンダメンタルズも好調であることから株高基調が続くものと思われます。それもこれも過剰流動性を供給した金融当局が演出する金融相場が主導したものであり、いよいよ実態経済へと目線が移っていくことになります。

【金融相場から実態経済の確認へと目線が移る】
各国の経済指標が上振れて好調を示す中で、失業率は低下して完全雇用に近づきつつあります。イエレン議長は労働市場の回復とインフレ期待率の向上を目標に金融政策を推し進めてきた経緯があり、FOMCメンバーは2018年のインフレ率が2%目標達成を予想しています。金融当局と市場参加者の中にギャップが生じてくるようであれば、米国の金利動向に合わせて金融政策にも変更余地が出てくるかもしれません。

為替市場ではトランプ大統領の経済政策の一環であるレパトリ優遇策・設備投資優遇策における減税効果が米経済を刺激し、米国にマネーが還流してドル高を予想する向きもありますが、これまではドル・インデックスが不自然に弱含んでいるフシがあり、素直に米国にマネーが集まることになるのか注視しておく必要があります。

【常にバブルの点検が必要とされる】
すでにマーケットでは先取り期待の動きが垣間見えますが、世界のリスクマネーはむしろ欧州の量的緩和縮小を選好してユーロ高を加速させる可能性の方が顕著に表れています。この流れが継続し、トランプ大統領のアメリカ・ファースト寄りの金融政策が採られるようであれば機動性が失われてバブルを生み出すかもしれません。FRBの利上げペースとトランプ政権のドル高容認のラインがどこに置かれているかは常に意識しておきたいと思います。

つまり、2018年の米株高を支える上で拠り所となるのは減税策だけで割高感を拭いきれず、これまで同様に製造業の復調とドル安を主因とした業績押し上げ効果によるもので、2017年とそれほど変わり映えしないものになるのではないかと思っています。つまり、先行期待の一部は調整要因へと代わり、NYダウの上昇ピッチは幾分か緩やかなものにならざるを得ないと思われます。逆に、それを無視した上昇となればやはりバブルと表現される類のものでしょう。

上記からも、トランプ大統領の関心事はやはり通商と軍事の2点に集約されることを意味しており、特に対米黒字に対する批判の口先介入などを警戒しておく必要があります。現在は為替動向と日本株の相関性は薄れつつありますが、今後の為替水準次第では中国はじめ、日本、欧州などに対しても圧力がかけられる可能性もありそうです。

【好調経済の阻害要因はやはり地政学リスク】
また、軍事面で最たる注目点は北朝鮮リスクへの対応になるかと思いますが、最近のマーケットは、ミサイル発射にも反応は限定的です。とはいえ、マーケットは何かが起きてから行動しようと考えているだけで、決して事態が良くなっているわけではありません。むしろ2018年は北朝鮮が米本土の全域を射程圏に収めるミサイル開発が完成するとされており、緊張状態が突発的に高まる可能性もあるだけにポジション管理には神経質にならざるを得ないことに変わりないでしょう。

【米国と並ぶ大国である中国が国際社会で存在感を高める】
米朝の対立を戦争に結びつけないための鍵を握るのはやはり中国の働きにかかってくると思われます。2017年10月の第19回党大会で習近平政権は2期目に入り、その基盤を盤石のものとしました。中国の景気停滞がソフトランディングし、経済が安定化することで国内の憂いは取り除かれますので、これまで以上に国際社会でのプレゼンスを高めることを狙ってくるでしょう。

【総括と日本株の処方箋】
お待たせいたしました。
では結局のところ日本株に対しては強気がよいのか、それとも弱気がよいのか。

結論として2018年は“強気”そして“順張りの押し目買い”が最もパフォーマンスがでる戦略となりそうです。

大納会の日経平均は22764円と23000円まであと一歩のところでしたが、やはり北朝鮮の年明けの動向が気になって「掉尾の一振」にかける投資家は買い手控えせざるを得ないのが現実だったかと思います。

昨年の日経平均は年初から479円高の大幅上昇で大発会を彩りましたが、一昨年は逆に582円安の大幅下落で惨劇に見舞われた投資家のトラウマも記憶に刻まれていますので、手放しでリスクテイクする動きは限られていたとみるべきでしょう。

また、昨年の傾向を振り返ると、日経平均は高値を形成して、およそ3か月程度は揉み合いを続けることが多かったと言えます。2018年もこれまでの流れに大きく逆らうことが無いとすれば、11月SQ付近を一旦の天井とみると、2月SQあたりまでは方向感の出にくい展開で始まりそうです。上記のような種々の不透明要因が横たわる市場環境では手探り感の中で上値を試すことを余儀なくされるでしょう。

2018年の日経平均を予測する声は方々でみられますが、昨年は安値18224円〜高値23382円で値幅は5158円、ちなみに一昨年は安値14864円〜高値19592円で4728円の値幅がでています。単純な比較はできませんが、今年は安値21500円、高値では27000円あたりまで上値を伸ばすのではないかと考えています。

最新の四季報でも引き続き企業業績は改善傾向が続くことを予想していますので、少なくとも今期の業績着地が発表される5月〜6月で高値を目指し、企業の来期見通しを確認しつつ、8月の1Q決算で上振れしてくる企業がけん引するかたちで11月の中間決算前に再び高値奪回もしくは更新していく動きが出てくることでしょう。

2018年の最重要イベントである米国の中間選挙まではトランプ政権もあらゆる政策を総動員して株高へつながる施策を打ち出してくるものと思われ、2017年同様に年末高するかは選挙結果の如何によって変わってくるものと思われます。仮に上院で共和党の議席上積みができれば、頓挫したオバマケア改廃案も実現するほどに政策運営がスムーズになる可能性もあります。その場合には年末一段高も夢物語ではなくなるでしょう。

下振れのリスクを挙げるとすれば、やはり再三述べてきた北朝鮮の核武装による地政学リスクと米国経済の中で伸びが鈍いコアCPI(消費者物価指数)ですが、焦らずに辛抱強く見守ることが求められるかと思います。

国内では日銀の物価目標2%になかなか届かないことが反リフレ派を助長させ、政策運営の足を引っ張ることも予想されますが、海外経済と安部政権が安定していれば徐々に理解が広まるものと考えます。物価は原油価格の上昇で高まりやすくなると思われますし、テクノロジーの進化による低下圧力を加味すれば違和感も解消へと向かうことでしょう。死角があるとすればマスコミの真偽が危ういフェイクニュースの類ではないでしょうか。

東京市場は海外投資家による市場影響力が高く、アルゴリズム取引への規制も緩いために荒稼ぎするファンドも参戦する弱肉強食の舞台となっています。昨年の記録的な日経平均16連騰の立役者となったのも彼らとされていますが、景況感の改善とともに個人の市場参加者がさらに増えると思われます。

おそらく個人を中心とした市場マインドの改善と企業が業績改善を背景に株主還元をより拡充し、配当や自社株買いが増えれば株式市場の需給はより良くなります。資金の回転が効くようになり、株式市場へ流入するマネーの総量も増加して日経平均30000への道が開かれることになるかもしれません。

すでに日経平均もTOPIXも2001年以来となる高値を奪回しており、他方ではIPO(新規株式公開)だけでなくクラウドファンディングやICO(仮想通貨での資金調達)など企業の資金調達手法も多様化している事実をふまえれば、グローバルマネーは確かに投資先を求めて活発に動いていることは明らかだと思います。

先の時代で現在を振り返った際に「2018年はリスクを取らないことがリスクだった」と言うことになるかもしれません。リスクは取り過ぎても、取らな過ぎてもいけません。リスクは怖れるものではなく、コントロールすることが大事です。これからも相場とうまく付き合っていくためにも、2018年の投資ライフはしっかりと足元を見ながら資産形成としての株式投資を積極的に行っていきましょう。

ここまでで『加藤あきらの注目セクター2018』と題しながら、セクターや銘柄などに割く紙幅がございませんでした。
ですので、明日も引き続き加藤の相場展望<番外編 2 >を配信したいと思います。
乞うご期待ください!

【 人 生 の 格 言 】
『リスクをとらないことの方がリスクだった』(TOYOTA燃料電池車「MIRAI」の開発責任者 田中義和)

それでは、明日に希望をつないで慎重にかつ大胆に取り組んでまいりましょう。


執筆:加藤あきら
配信元: 達人の予想