NGTNさんのブログ

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ブッシュ×バーナンキ×ポールソン

・バーナンキ議長講演
必要に応じて行動する(act as needed)、過去の経済指標よりも、今後の景気先行きに注意を払っていく、とのこと。具体的に言えば、今後注視していくのは、足元のクレジット市場の動向や、景気の先行指標であるISM製造業景況指数、新規失業保険申請件数などに、クレジット市場の混乱、流動性の枯渇の影響が出てきていないかということだと思います。つまり、CPや社債などのクレジット市場がタイトになって(リスクプレミアムをたくさん上乗せしないと買ってもらえなくなり)資金調達コストが上がると、企業活動に影響が出るので、その兆候があるようならFFレートも下げますよ、ということ。クレジット市場の意味については以下のページがわかりやすいです。CP(コマーシャルペーパー)や後から出てくるCDOなどの意味の知らない単語については自分で調べて頂きたいです。
http://www.boj.or.jp/type/exp/seisaku/expcredit.htm

・98年のLTCM破綻の時は、FFレートを 0.25 × 3回下げました。その後は景気を刺激し過ぎて、ITバブルと相まって2000年にピークを付け、山高ければ谷深し、という結果に。FRBはその轍は踏みたくないのではと思います。

・ブッシュ大統領のサブプライム層救済案
米連邦住宅局(FHA)が債務を保証し、ローン支払いが滞っている人の低い金利のローンへの借り換えを促します。現状では適用されるのは8万世帯程度。2008年末までに変動金利により金利アップするのは200万世帯。FHAはこの200万世帯のうち、50万世帯が貸し倒れになると予想し、そのうち半分は救済できるように現状の案を拡大していく予定とのこと。ちなみにサブプライムローン全体は600万世帯程度。ということで、この救済案自体の効力は高が知れていて、民主党も効果ないからもっと踏み込んだ内容にしろ、と言っています。金曜の株価上昇は、政府が本腰入れて対策に乗り出したことに対する期待感からでしょう。
http://biz.yahoo.com/ap/070901/bush_housing_slump.html?.v=1

・サブプライムローンの金利について補足しますと、サブプライムローンの変動金利は、最初の数年は年利4-5%程度、後から10-15%になります。2003年あたりに住宅価格上昇を見込んで組まれた無茶なローンがたくさんあり、その金利アップが適用されるのが2007年、2008年に集中しているみたいです。ちなみに、信用力のある人向けのプライムローンは30年固定金利で6%ちょっとです。

・バーナンキ議長もブッシュ大統領も、投機家は救うつもりはないと強調しています。ブッシュ大統領の言う投機家は、値上がり益狙いで無茶して住宅投資をした人のこと。バーナンキ議長の言う投機家には、それに加えてCDOなどで大損出したヘッジファンド、投資銀行なども入ると思われます。

・これまでのアメリカの対応をまとめますと、
- カントリーワイド社などクレジット市場のタイト化により資金繰り上手くいかなくなったところは、公定歩合の金利を下げFEDがlast resortとなることで対応し(それでもだめならFFレート利下げで対応)、短期金融市場への資金注入でお金の流れを止めないようにする。
- 住宅市場の悪化で沈みそうな人については政府が救済していく。
- モラルハザードで大損しちゃったヘッジファンドや投資銀行や住宅投機家などは、自分のケツは自分で拭け。前も書きましたが、あと2ヶ月くらいは、世界中の金融機関の大損しましたー!って決算がぞろぞろ出てくると思います。

・住宅市場について
FFレートを下げたからといって、住宅市場がすぐ回復するとは思えないです。以下のリンクのFFレートの変遷と30年国債利回りの動きを見てもらえばわかると思いますが、固定ローン金利の元となる30年債利回りは現状でかなり低利なので、FFレートを下げてもこれ以上はあまり下がらないのではないでしょうか。今すぐに沈みそうな人は、ブッシュ政策で救いつつ、積み上がった在庫を時間をかけて消化していくしかないと思います。住宅価格が暴落すると厳しいですね。ということでFFレートの利下げが効いてくるのはクレジット市場や短期金融市場であり、企業の設備投資や雇用などを刺激してそっち方面から住宅市場の落ち込みをカバーする方向になると思います。
http://www.martincapital.com/chart-pgs/Ch_ffnds.htm
http://finance.yahoo.com/q/bc?s=%5ETYX&t=5y

・住宅市場は暗い状況が続くと思いますが、米経済は住宅市場だけではないです。現在はBRICsをはじめとして、世界中に経済成長のドライバーが分散されているので、外需の米企業は利益を上げていけると思います。ドル安の恩恵もありますし。今のところ住宅関連を除けば米企業の状態は健全です。個人消費は雇用頼みですね。

・2月,3月の世界同時株安のときとは、金融市場のダメージが全く違います。クレジット市場を見てもそうですし、CDOなどによる世界中の金融機関の損失を見てもそう。なので、2月、3月の時は2ヶ月もかからずダウは高値を更新しましたが、今回はそう簡単には上がらないと思います。そもそも、何もなくても今年のダウの上値はここ2,3年のPER水準からするとに14000ドル程度だと考えてます。まあ、低金利万歳!LTCM後の株価急上昇の再現がありそう!ってことで能天気なリスクマネーが買い上げていくかもしれませんが。そうなったらまた山高ければ谷深し、になると思います。

・アメリカが利下げしすぎた場合のリスクは、ドル暴落・米国債売り。ドル資産への資本流入で赤字を埋めている構造が崩れたら終わりです。まあ、日本はどんなにドル安でも利回りが低くても買うと思いますが、他の上位お買い上げ国である、ロシアや中国などはどうするかわかりません。

・日経平均はよくわかりません。18000円を超えたのは、1ドル120円以上の時なので、今の為替レートでどこまで上がるか。外国人中心の日本では、多分、今後2,3月はドル建てでしか判断されないと思います。中間決算発表で上方修正連発とかなれば、1ドル115円でも18000円を超えていくのでは。

・金曜はNY市場は大幅高でしたが、為替は円安になりませんでした。利下げによる金利差縮小を織り込みにいっているのか、それともリスクマネーはまだまだ戻ってきていないのか。目先は、9/6のECBの動向ですね。ユーロの金利上げるのか据え置きか。


以上、自分の現時点での知識のちょっと上あたりまでを結構頑張って書いたので、変な事を書いているかもしれません。ここ違う、ってとこがあったらご指摘いただきたいです。しかし、本業は短期トレーダーなのに、こんなエコノミスト的なことばっかり書いて・・・
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13件のコメントがあります
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    NGTNさん
    2007/9/4 16:30
    HITACHI LOVEさん、

    こんにちは。金利動向はほんと難しいですね。2004年以降のFFレート利上げ局面でも長期金利が上がらなかったことについて、グリーンスパン氏も「謎」と言ってたくらいなので、利下げ局面になったとして今度は長期金利はどんな動きをするのだろう?と。経済活動もマネーの動きもグローバル化しているので、アメリカの国内事情だけでは考えられなくて複雑です。
    サブプライムローンは、低利の固定ローンに借り替えさせても払えない人はいっぱいいるでしょうね。住宅価格の値上がりを前提として無理なローンを組んでいて、住宅価格がまたバブル的に上がっていかないことには逃げられないのでしょう。

    それでは今後ともよろしくお願いします。
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    NGTNさん おはようございます
    わざわざ ご回答いただき恐縮です。

    私もFFレートを1%下げたらどうなるだろう・・・うーん?
    で悩んでいます。仮にプライムローン6%をサブプライム対象者に適用し借り換え金利に使っても、支払い出来るかなって
    思っています。なのでプラス所得税控除かと・・・。

    私はまだロイターなど自分の考えに近い記事を忘れないように日記にコピーしている程度です。流石、専属トレーダーをされているだけあって経済の流れに自分の意思をしっかり持たれているなって感心しています。
    ここに登録して初めてリスペクトさせていただきました。
    また拝見させていただきますね。
    今後ともどうぞよろしくお願いします。
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    NGTNさん
    2007/9/4 01:58
    Tanpanさん、
    去年の11月は、ユーロ高により欧州勢が売ってきているなんて話もありました。
    日本株が強くなるには、1500兆円と言われる個人資産がどれだけ投資に回されるかですね。キャピタルゲイン税10%でもこの有様ですし、何かこれはもう日本人の気質を根本から変えないと状況は変わらない感じもします。

    HITACHI LOVEさん、
    はじめまして!
    住宅ローン金利は、どこかで読んだ記憶から30年債利回りから出されると思ってました。30年固定金利ローンと長期債利回りがごっちゃになったのだと思います。ご指摘いただきありがとうございます。
    FFレートを下げても長期金利があまり下がらないと思ったのは、単純に過去との比較であまり深い考えはありません。。。2001年の利下げ局面の時よりも現在の長期金利は低いですし、FFレート1%の時と比べても今の長期金利はその時よりも1%程度高いくらいですし、仮にFFレートを1%下げたら10年債利回りも1%下がって3.5%に?うーん・・・くらいの感覚です。後は、中国などの米国債を買う国が自国のインフレ率よりも利回りが低くなっても米国債を大量に買い続けるのか、通貨も強いユーロ圏の国債の方が魅力的にならないか、といった感じです。
    金利や債券についての知識が不足しているので、変なことを言っているかもしれませんが、よろしくお願いします。
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    NGTNさん こんばんは はじめましてm(_ _)m
    実に濃い内容が自分の言葉で書いてあり、正直すごいなって
    感心しました(*▽*)。株育成計画2さん をはじめこれを
    読んで勉強されていらっしゃる方も本当に多いと思います。

    >ここ違う、ってとこがあったらご指摘いただきたいです。
    と書いていただいておりましたので参考までに質問にお答え頂けたら幸いです。


    >・住宅市場について
    >FFレートを下げたからといって、住宅市場がすぐ回復するとは思えないです。以下のリンクのFFレートの変遷と30年国債利回りの動きを見てもらえばわかると思いますが、固定ローン金利の元となる30年債利回りは現状でかなり低利なので、FFレートを下げてもこれ以上はあまり下がらないのではないでしょうか。


    ごめんなさい 勉強不足でm(_ _)m
    FFレートを下げたからといって、住宅市場がすぐ回復するとは思えないです。ここは同感なんですが、FFレートの変遷と30年国債利回りの動きについての関連性がよくわかりませんでした。何故30年債(市場金利)を持ち出されたのかというとこなんですが、アメリカの場合、住宅ローン金利は10年債の実行金利をベースに算出しています。(釈迦に説法ですみません)
    FFレートの変遷という言葉なんですが、FF金利は景気、物価を制御するために中央銀行が動かす金利で長期金利は、将来の長期的なFF金利の動きを予想して、市場が決める金利ですから従来の常識では短期金利を動かせば、必ずそれに連動して長期金利も上下します。今回で言えば市場は、将来FF金利が下がると思えば、今のうちに長期債を買って、金利が低下することに備えますよね。

    そこで変遷と言われて思い出したのがFF金利のレートが1%だった2004年6月以来、連続で15回にわたってこの「短期金利」をひきあげましたよね。でも長期金利はほとんど動きません(06年10月までで平均4.7%だったと思います、一時は4%を切った事もありました)でした。
    短期金利をいくら上げても長期金利にまったく影響が出なかった(上昇しなかった)この変遷をなぞって長期債金利が
    上がらないと言われたかったのでしょうか?

    すみません、ぶしつけな質問をしてしまい。
    私も勘違いしている部分があるかも知れません。
    よかったら優しく教えてくださいね、お願いします。
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    Tanpanさん
    2007/9/3 21:41
    >年金などの長期派の外国人にとっては、ここ1年半ぐらいはボックスなのでパフォーマンス悪いなぁと思われてそうですね。

    と、言うことは・・いざとなったら現金化のための売りをしやすい市場ということ??
    のんきに100円上がったとか200円上がったとか言っても飛んでしまいそうな危うさですねぇ・・

    後は日本企業の業績頼みですか・・**
    頑張れ日本!!

    日本政府ももっと株式を保有する事を推進するような政策を取ってほしいですよね。
    食料自給率もそうですが日本は肝心の部分を外国に依存しすぎですよ。

    って 「自分の日記に書けよ!!」って位のコメントですみません。(^^)ゞ
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    NGTNさん
    2007/9/3 21:22
    いえいえ、あまり感謝されてもこそばゆいです。
    私は元々経済とか金融は全く興味が無くて、ニッポン放送のホリエモン騒動を見て何か面白そうだなと思って株を始めたので、下地も何もない素人なんです。なので、わからないことはその都度色々と調べて、それを文章にまとめると理解も深まるし考えも整理されるので、ほとんど自分のために書いているようなものなのです。
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    育成計画さん
    2007/9/3 20:43
    NGTNさん、
    いつもためになる日記&フォローありがとうございます。

    NGTNさんの日記を読んで、
    勉強になっている人いっぱいいると思います。
    本当にありがとうございます。
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    NGTNさん
    2007/9/3 20:04
    -日記訂正-

    ブッシュ救済案の記述についてですが、「貸し倒れ」ではなくて「物件差し押さえ」でした。原文がforeclosureだったのですが、間違えて解釈してました。流れとしては、ローン返済が滞ると物件差し押さえられて競売にかけられます。
    というかですね、不動産用語って日本語でもよくわからないです・・・
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    NGTNさん
    2007/9/2 23:44
    日本の場合、円高と株安が同時に来るので、ドル建てで見るとあまり下がらなくて、ヘッジファンドなどの短期派の外国人にとってはいじりやすいのでは。現物買いにヘッジでオプション・プット買いを組み合わせると、暴落時に現物はドル建てであまり下がらなくても、プットは大きく値上がるってことも出来そうですし。
    年金などの長期派の外国人にとっては、ここ1年半ぐらいはボックスなのでパフォーマンス悪いなぁと思われてそうですね。
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    Tanpanさん
    2007/9/2 20:07
    日経平均をドル換算で見るのはそそられますねぇ。
    外国人から見た日本の株っていったいどんな風に見えているのでしょう?
    ラジオNIKKEIの実況で「ただいまの日経平均株価18000円。156ドル56セントです・・」なんて両建てで読み上げてくれたら便利かも・・(^^)
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    NGTNさん
    2007/9/2 19:29
    株育成計画2さん、
    崩壊しているのは、アメリカの住宅バブル、世界中の金融市場のレバレッジバブル、デリバティブバブル。底堅いのは、新興国に引っ張られる世界の実体経済、だと私は思っています。前者が弱気に後者が強気につながって、今のところそれが拮抗しているので、方向感が定まらないボラティリティの高い相場になっているのかなと。

    ヨッシーさん、
    はじめまして!お褒めに預かり光栄です。私がマクロ経済や金融市場のことを色々書いているのは、半分は単純な興味からでして、それが相場での利益につながるのかというとそれはまた別問題ですね。100%未来を予測できる人はいないので、ヨッシーさんも書かれているように目の前の相場の動きに対していかに立ち振る舞うか、が大事ですよね。登山だったら無理な山には登らない、サーフィンだったら無理な波には挑まない、の精神で行きたいです。
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    ヨッシーさん
    2007/9/2 14:33
    NGTNさん、はじめまして。いつも参考にさせていただいています。NGTNさんの博識にはいつも感心しています。

    サブプライム問題はバーナンキ、ブッシュ発言で解決したような風潮がありますけれど、本格処理なこれからですからね。今の時期は久々にきた投資家の相場観が試される時のような気がします。

    バブルの時には誰でも儲かった、バブル崩壊では誰でも損した、リバウンド相場では誰でも儲かった、さて今回はという感じです。今まさに投資家は岐路に立たされているのだと思います。

    ここでいかに立ち振る舞うか、どのような投資行動をとるか、難しいですが勝負の時が来ているようですね。

    私は勉強不足、知識不足でこの難局を乗り切れるか不安もありますが、「無理せず、焦らず、冷静に」をモットーに行動したいと思っています。
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    育成計画さん
    2007/9/2 13:46
    いつも情報ありがとうございます。
    大変参考になります。

    相場観は十人十色なんでしょうけど、
    私は、『プチバブルの崩壊中だけど底堅い』という珍現象なのかなと思っています。

    具体的にどう投資行動に役立てるかは、また別問題なのですが、
    値動きの舞台裏を知ることによって、
    価格変動リスクに応じてポジションを調節していきたいと思っています。