創業117年、製造の現場を支えるリックス株式会社ってどんな会社?
まずは、リックスさんの事業についてお伺いします。創業1907年の100年企業とのことですが、どういった歴史をお持ちなのでしょうか?
現在は「メーカー商社」として、さまざまな製造現場の課題に対して、商品やサービスを通してソリューションを提供するBtoB業務をメインに行なっています。1907(明治40)年の創業当時は、BtoCで足袋(たび)の卸売を行なっていました。昭和に入り、当時の官営八幡製鉄所(現・日本製鉄)と取引するようになったのをきっかけにBtoBの仕事が始まりました。
現場に出入りすると、お客様の困りごとが目に入ってきたり、声をかけられたりするようになります。それを解決するような商材やサービスを提供していったことで、今の「メーカー商社」という業態に変わっていきました。
鉄鋼、自動車、半導体など様々な業界のお客様がいらっしゃいますよね。
最初は鉄鋼業界だけでしたが、製紙や自動車、半導体などに広がりました。おかげさまで、例えば鉄鋼業界でいうと日本製鉄さま、自動車業界でいうとトヨタ自動車さまなど、各業界のトップランナーとお取引をさせていただいています。
私たちの特徴は、「ものづくりのプロセス」で使われるような製品やサービスをメインに提供しているとことです。
工場などの生産設備に使われている商材が多いですよね。実は私も元々、半導体メーカーの開発職だったので製造現場で働いていました。その工場にもリックスさんの製品があったかも?
きっとあったと思います(笑)
技術力と商材数の多さを武器に海外でも積極展開
今や国内拠点数40カ所、海外拠点は12か所もあるんですね。
現在、海外展開を積極的に進めています。日本の製造業が培ってきたノウハウは海外でも通用する。その海外展開において、リックスは裏方として支えられると考えています。メーカー商社である我々には技術力もありますし、取扱商品数も多い。お客様の抱えるさまざまな課題に対して幅広いソリューションを提案できるのがリックスの強みです。
まだまだポテンシャルを秘めた日本の製造業
製造業の土台を担っているわけですね。安井社長は日本の製造業の現状と将来をどのように見ていますか?
まだまだポテンシャルがあると思っています。例えば世界で今後、自動車のEV化がさらに進んだ場合、自動車業界だけではなく、いろんな業界に影響が及びます。
自動車業界だけじゃないんですね。
例を挙げると、電気自動車はモーターを積むぶん、軽量化を図らなくてはいけない。さまざまな「軽くて丈夫」な素材が必要になってくるわけです。ここで日本が得意とする“高付加価値”な製品づくりのノウハウが活きると考えています。
高付加価値という面では、世界のなかで日本の製造業が牽引している分野が多くありますよね。
半導体業界に目を向けると、世界大手のTSMC(台湾積体電路製造)の工場が熊本にできるなど日本への関連企業進出、設備投資が加速しています。そもそも国内の半導体装置メーカーが強く、右肩上がりの市場環境じゃないですか。
リックスさんの拠点地図を見ると、網羅的に国内全域でサービスを展開していますね。
「顧客密着営業」と呼んでいるのですが、お客様の近くに拠点を構えコミュニケーションをしっかりとることを会社として大事にしています。
半導体を作っている企業さまと、装置を作っている会社さま、両方とお取引を行なっていますが、例えば、リックスのメーカー部門の主力製品である「ロータリージョイント」は、半導体製造の部品として欠かせない存在になっています。
ウエハ(半導体製造に使われる円盤状の基板)を研磨するときに固定させるためのものですね。むちゃくちゃ懐かしい(笑)。こういった事業で、高付加価値を生む製造現場を支えているんですね。
トランプ関税はマイナスとは限らない?
一方、日本の製造業を見る上で、最近気になるのがトランプ関税の影響です。どのように捉えていますか?
日本のお客さまを見ていても、そこまで「苦しんでいる」という印象はあまりないですね。
現地でお客さまのお話を伺うと、アメリカではすでに賃金がかなり上がっていて、人件費が相当高くなっています。そのため、関税を考慮しても「むしろ日本で作って送った方がいいのでは?」と判断するケースもあります。また、アメリカで生産する場合、ほとんどの原材料を輸入する必要があるため結果的にコストが上がってしまうこともありますし、さまざまな地域で事業展開されているお客様も多いので、「別の第三国で生産する」という戦略を取る企業もあります。そうした自社を取り巻く環境に合わせて、各社柔軟に戦略を立てていらっしゃいます。
「トランプ関税があるからマイナスだ」と単純に考えるのは違うということですね。むしろ、日本をはじめとした他地域の製造拠点にとってプラスに働く可能性もあると。
そうですね。まだ一概には言えない状況だと思います。
「世界中のものづくりの課題解決」を生むリックスの開発力
日本の製造業まだまだ世界で伸び代があるぞ、という話を伺ってきたわけですが、そのなかでリックスさんはどのような想いを持って事業を行っていますか?
「協創」という言葉を大事にして、お客様の抱える課題を、メーカー商社として時にはお客様と一緒に製品を開発しながら解決しています。例えばこの配管洗浄機「ARASEN(アラセン)」などは実際にお客様と開発して生まれ、市場に出た商品です。
ひとつの会社が悩んでいることは、他の会社さんの悩みにつながることも多い。こうやってソリューションが生まれることによって、日本の企業全体の底上げにつながることになりますね。
2030年度目標で売上高700億円 リックスの成長戦略とは?
今後はどういう成長戦略を描いているのでしょうか?
「世界中のものづくりの課題解決屋になる」ことを「あるべき姿」とした長期経営計画「LV2030」を策定しています。
連結売上高は2030年度目標で700億円。現状は2024年度で547億円となっています。営業利益目標は56億円、営業利益率は8%以上を目標にしています。
目標は世界中のものづくりの課題解決なので、海外売上比率を13%→20%に持っていく計画です。その中で現在は、独自性があって利益率が高く、国内外問わず高い競争力を持つことができる「オリジナル品」の比率を55%にすることに最も注力しています。
2024年度の時点でオリジナル品は31.7%ですが、利益率は他の商品よりも高いのですか?
はい、高いです。新しい製品の開発強化に関しては、昨年の11月に、本社のある福岡に新しい研究開発施設「リックス協創センター」をオープンしました。
名前の通り、お客さまや仕入れ先さま、大学、ベンチャー企業、国の機関などと協力してソリューションを作り上げることをコンセプトとしています。
新しい取り組みで言うと、陸上養殖設備の開発・実証実験なんかにもチャレンジしています。
また毛色の違ったこともやってらっしゃる。面白いですね。
もちろん養殖自体のノウハウはリックスにありません。だけど、我々は流体に関する商材や技術を持っています。陸上養殖に必要なフィルターやポンプなどを全部一通り揃えられるので、それらを組み合わせて実証実験を行っています。
「養殖のプロ」ではなく「製造を支えるプロ」として知見を活かしているんですね。
他にも9月に酪農家向けの取り組みとして、牛が餌であるわらを自分で押し出してしまう問題を解決するためのロボットを発表しました。商売になるのかどうかは分からないのですが、いろんな挑戦をしています。
投資家としても企業にチャレンジ精神がないと、今後の売上が長期的に立つのか疑問に思ってしまいます。すごく素敵な企業姿勢ですね。
最初は「製造工場の生産設備を作っている会社」という印象だったんですが、全然それだけではないですね。事業の幅が広く、そしてシンプルに内容がめちゃくちゃ面白い。もっと気になってきちゃいました。
「こんないい銘柄をなんで皆知らないの?」 投資家目線での魅力分析
私からも聞きたいことがあります。ふゆこさんにとって、銘柄を魅力的に感じるポイントは何ですか?
いろいろありますが、まず私は「高配当株投資家」なので、「配当金がそこそこもらえる」ことが大前提としてあります。
あとは、利益率や売上高、自己資本比率という指標が右肩上がりであること。それにプラスして調べていった時に「好きになっちゃうくらいの魅力ある企業か」というポイントを大事にしています。そういう意味では、リックスさんは同業他社と比べて利益率は高めですよね?
高いと思います。
私はだいたい「営業利益率10%以上の会社」を買うようにしています。ただ、業界ごとに平均の営業利益率は少しずつ違う。なので、細かく見るときは、業界の中で相対的に高いかどうかを確認しています。ちょっと偉そうかもしれないですが、リックスさんはトップクラスの営業利益率なので、このポイントをしっかりクリアしています。
ありがとうございます。
逆にこんなにいい銘柄なのに、みんななんで知らないんだろうというのは思いました。
以前はIR活動をほとんどやっていなかったので、すごく反省しています。東証の再編を機に、本気でやり始めました。
では、これから伸び代しかないですね!
IR・広報部門を中心に投資家の皆さまと対話できるような施策をいろいろとやっているので、今後も期待していただければと思います。
「創業117年赤字なし」という驚きの業績
もうひとつ投資家目線でリックスさんの魅力としてあげるなら、「創業117年間で一度も赤字がない」ということですね。これはやばいですよ!(笑)
私は2019年から社長を拝命しているのですが、ものすごいプレッシャーですよ(笑)。
投資家視点だと「117年赤字なし、すごい!」って感じですけど、社長の立場からすると、それが重圧になるわけですね。
おかげさまで、コロナ禍を含めて赤字を出さずに来られました。ここまで売上を支えてくれたのは全体の半分ほどを占める“基礎品”、いわゆるリピート品ですね。先人たちが長年にわたって営業活動を行い、定期的に受注が入る仕組みを作ってくれたおかげです。そこに、「顧客密着型営業」を重ねることで、安定的な売上基盤を築けています。
もう一つの強みは、お客さまの業界が非常に幅広いことですね。
リスク分散ですね。投資の世界でも業界を分けることは非常に大事です。それを事業で実現していらっしゃるのが素晴らしい。
投資家の皆さまに損をさせたくないですから。こちらは株主還元のスライドですが、2022年から年間配当が上がっていますよね。
めっちゃ上がっていますね。何があったんですか?
配当性向を「単体の業績の30%」から「連結40%」に変えました。さらに配当性向だけだと業績に左右されて、もらえる配当の上下幅が大きくなってしまうため2025年度からはDOE4.5%を採用しています。
しかも、「高い方を配当として還元」となっているのは嬉しい。クオカード1,000円分(100株以上300分未満)の株主優待もあるのがいいですね!
財務ですごくいいなと思ったのは、有利子負債額よりも持っている現金額の方が大きかったことです。私は勝手に「実質無借金経営」と呼んでいます。
今後、成長のために大きな投資が必要になる時は実質無借金状態ではなくなるかもしれません。その際は、しっかりと成長ストーリーを株主様に説明しながら、チャレンジしていこうと思っています。
挑戦のための投資も大事ですから、その際に説明をしっかりしてくれる企業は投資家としても信頼できます。
IRに力を入れ始めて、投資家の皆さまからのお声がたくさん届くようになりました。今はその声を反映しているステータスなので、今後に期待いただければ。今日もふゆこさんにいろいろとためになるお話を伺えたので、投資家の皆様に魅力的だと思ってもらえる企業になれるために、これからも研鑽していきたいと思います。
今後ともよろしくお願いします。
こちらこそ素敵なお話をありがとうございました。お話を聞いても、もっともっとリックスさんのことを知りたくなってしまいました。
対談を通して読者の方にもリックスさんの魅力が伝わったのではないかなと思います。「世界中のものづくりの課題解決屋」を目指して、新たな挑戦を続けるリックスさんのことをこれからも注目していきたいと思います。
本日はありがとうございました!