【井川純一の今夜も兜町で一杯】夕焼けが目にしみたら

　今日１２月７日（水曜日）の日経平均株価は、１３６円１５銭高の１万８４９６円６９銭と続伸。前日の欧米市場が総じて堅調で米国株市場ではＮＹダウが連日の最高値更新となるなどリスク選好ムードが続いています。為替も１ドル＝１１４円前半での推移と円安含みで推移していることも買い安心感を与えた感じでしょうか。

　そんななか、目を引いたのがソフトバンクグループ<9984.T>。孫社長がトランプ次期米大統領と会談し、米国でのビジネスに巨額の投資をする方針を示したことを受け、群を抜く売買代金をこなし急騰。当方ごときが言うのもなんなのですが、やっぱり孫さん、ただ者じゃないわね。
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　今日は、なんだか銘柄に対しての感応度が非常に鈍い。故に、相場を見ていても、な～んにも感じない。困ったもんだよなぁ。

　相場は難しい、当たり前のことだ。人生はもっと難しい、これは誰しも知っていることだ。人生の勝者であれ敗者であれ、人はそれぞれに生きることの難しさを感じたことがあるはず。それでも人は生きて行かなきゃならない、まったくもって嫌になる。

　トランプ相場とやらで、ご存知の通り株式市場は元気が良い。ただ、個人投資家も兜町の連中も、なんだか妙に冷静だ。あるいは冷めていると言っても良いのかもしれないなぁ。まぁ、「いけいけドンドン」と言われても、いままでの〝手痛い仕打ち〟を考えるとそうはたやすく飛び乗れない。「今度こそ」とばかりに参戦すると、全体相場が急降下し、あっと言う間に迎撃されてしまう。そんな経験則を持つ投資家が、疑心暗鬼に陥ってしまうのは不思議でもなんでもない。

　友人の株式ジャーナリスト氏曰く、「まあねぇ、いまはトランプ発言をハヤす相場なのだろうけれど、そのうちマーケットにとって耳に心地よい発言内容が剥げ落ちることを、みんな良～く知っているんだよね」。

　バブル崩壊、そして失われた ２０ 年を経て、日本人はすっかり冷静になった。冷静さを持つこと自体は悪くないのだが、すっかり〝踊ることの楽しさ〟を忘れてしまったのかも知れない。「踊る阿呆に見る阿呆、同じ阿呆なら踊らな損々…」なんて、いまの日本人は思っちゃいない。バブル経済の崩壊で、踊って損をしたことの痛手が、いまだ日本国民の記憶から消え去っていない。

　でもなぁ、踊り方にも様々あって、狂乱じゃなくて優雅な踊りもあるんじゃなかろうかと思う。とは言え、酒をあおり管を巻くくらいしか能が無く、踊りのひとつもできない当方としては、こう書いておきながら少々はばったい気持ちもある。やっぱり〝言うは易く行うは難し〟ってことなんだろうなぁ。まあ、なんだかんだと書いてきたが、そろそろ踊り方を思い出しても良いんじゃなかろうかと思ったりするのである。

　そんなふうに、つらつらと適当なことを考えているうちに夕暮れ時。街にぶらり出る。ふと見上げると、真紅ではなく仄かなやさしい夕焼けが街を包み込んでいた。そんな夕暮れの街を見ると、なんだか悲しくなってくるのは、人生の黄昏を迎えているせいかもしれないよなぁ。ふと、「夕焼けが目にしみたら、取りあえず手仕舞いをする」という口癖の、既に鬼籍に入って久しい大先輩の言葉を思い出した。

　気が付けば季節は晩秋から初冬へ。ああ、師走の夕暮れはあっという間に宵闇を連れてくる。
《ＫＣ》

出所：株経ONLINE（株式会社みんかぶ）