「チャートは強気転換も・・・」

著者:黒岩泰
投稿:2015/07/02 19:50

「短期的には上下に振れやすい」

 本日の日経平均は193.18円高の20522.50円で取引を終了した。朝方は買い先行となったものの、その後は高値圏での膠着相場。引けにかけてやや伸び悩む形となり、上値の重い展開となった。上海総合指数が下落歩調を強めたことも、上値抑制要因として意識された。
 
 日経平均の日足チャートでは、窓を空けて上昇。強気相場へと転じており、事実上のアイランド・リバーサル(離れ小島による強気転換サイン)が出現している。「軸下向き」を否定する動きであり、急落リスクは後退している。

 窓チャートでは、株価が上下の窓に挟まれる形。短期的には相場が振れやすくなっており、株価の急激な変動には注意すべきであろう。
 
 今晩は米国で雇用統計の発表がある。昨日発表されたADP雇用レポートは市場予想を上回っており、米景気に対して楽観的な見方が広がった。投資家は「米雇用統計は重要指標」と認識しているが、最近は統計手法の変更から、ADPとの連動性が極めて高くなっている。米雇用統計自体でサプライズが起こりにくく、今晩の米国市場で波乱が起こる可能性は低いと言えよう。
市場は5日(日)のギリシャ国民投票を最重要イベントだと考えている。欧州サイドの緊縮策を受け入れるのか、それとも受け入れないのか。「賛成が多ければ、株価は上昇。反対が多ければ、株価は下落」などと考えている。

 日経平均の日足チャートの動向からすれば、ギリシャ国民投票は「賛成」となるのだろう。でないと、チャート形状が強気転換することは難しく、それを察知しての上昇だと思われる。

 そもそも、世間は「ギリシャがユーロ圏から離脱するかもしれない」などと言っているが、実際には「ユーロ脱退の規定がない」のが事実。最終的にギリシャがユーロを離脱するにしても、手続きに時間がかかり、早期の離脱はほぼ不可能に近いのだ。ユーロ圏自体もギリシャのユーロ離脱を認めれば、今後、スペイン、イタリアに対しての警戒感が強まることを十分に承知している。ロシアや中国などから横槍が入る可能性もあり、そう易々とギリシャのユーロ離脱を認めるわけにはいかないのだ。だから、最終的にはギリシャは「救済」され、ユーロ圏のなかで飼い慣らされることになる。世界統一通貨の誕生を目指す支配層の思惑からすれば、逆方向であるギリシャのユーロ離脱は考えにくいということ。ユーロは統一通貨に向けてのワン・ステップであり、重要な役割を果たしているからだ。そのようなシナリオを市場は事前に察知し、結果的に日本株の上昇につながった。チャーチストは「材料→株価の変動」と考えるのではなく、「株価の変動→(これから起こる)材料」と考えるのである。そうやって、相場に対して素早い反応を起こすことができる。今の時代、スピードが命なのである。(黒岩の眼より)
黒岩泰
株式アナリスト
配信元: 達人の予想