「下げ止まらず、あとは為替介入のみか・・・」

著者:黒岩泰
投稿:2016/02/13 08:35

「都合の悪いニュースはスキャンダルで隠蔽」

 本日の日経平均は760.78円安の14952.61円で取引を終了した。朝方から売りが優勢となり、その後は一段安の展開。後場に入ってから「アベクロ会談」で買い戻しの動きが強まったが、これも一時的。引けにかけて売り直された。日経平均の日足チャートでは昨日の下ひげをあっさり下回る動き。先安観の強いチャート形状となっている。

 株価の下落が止まらない。市場では円高に加え、金融危機への警戒感が強まっており、処分売りの動きが加速している。企業の想定為替レート(1ドル=115円)をあっさり割り込んだことで、業績下方修正への警戒感が増しているのだ。そして、ドイツ銀行のCoCo債利払い延期観測を発端にした同行への信用不安が増大。投資家はかなり疑心暗鬼になっている。「もしかしたらリーマン級の出来事が起こるのではないか」と警戒感を強めているのである。

 日経平均の日足チャートでは、まったく底打ち感がない。下方に位置している窓もズブズブ下抜けており、まったく止まる気配がない。証券会社の追証に伴う損切りの動きも、来週半ばまで引きずるという。いわゆる「セリング・クライマックス」を迎えたといった感じはなく、これからさらに恐ろしいことが起こりそうな雰囲気である。基本的には「アベノミクス・バブル」が崩壊しており、場合によってはお里帰りである8500円まで下落する可能性がある。それぐらいの覚悟が必要なようだ。
 だが、政府・日銀もこのまま無策ということもないだろう。効果は一時的かつ限定的と分かっていても、何かしらの施策を打たなければならない。それでは何が残されているのか。そう、それは「為替介入」である。昨日、日本が建国記念日で休場だったとき、欧州市場ではドル・円相場が一時111円から113円台に急伸する場面があった。「すわっ、為替介入か」との観測が浮上したが、現時点では確認はとれていない。実際に為替介入が行われたという発表はなく、恐らく投機的な動きが加速しただけなのだろう。

 為替介入というのは、財務相の専権事項である。実際の業務を行うのは日銀だが、完全に財務省マターである。財務省が政府短期証券(FB)を発行し、その資金で日銀が介入を行う。実際には米国債を買うことになり、「日本政府が借金をして米国債を買う」という行為となる。だから、日銀の量的緩和政策が限界を迎えた今、政府主導によって円安・株高誘導することは十分に可能だ。100兆円単位で為替介入をすれば、いくらでも相場を持ち上げることができる。そういった意味では政府は「切り札」を持っていると言えよう。7月の参院選、場合によっては衆参同日選挙となった場合、直前の株価対策として大胆な為替介入を実施してくる可能性はある。もちろん「1ドル=112円レベルでは時期尚早」ということもあり、その切り札は温存される公算が大きい。麻生財務相がどこで判断するのか、ということになる。

 ただ、この為替介入も当然、副作用を伴う。国が借金してまで米国債を買うことになるのだから、これは「日米財政一体化」につながる危険な行為である。万が一、100兆円レベルで為替介入を実施すれば、ただでさえ不安定な財政が一段と危険な状況に晒されることにもなる。「日米同時破綻」の悪夢も十分ありうる話であり、手放しに喜ぶことはできないのだ。政府・日銀は何をやっても、強烈な副作用に襲われることになり、中長期的には八方ふさがりにあると言えるだろう。一時的な株価カンフル剤として「為替介入」を使うという選択肢はあるが、量的緩和と同様、所詮、痛みを和らげるモルヒネにすぎない。投資家は「実態」をよく観察する必要があり、「真実」を追究するべきであろう。いったい、世界では何が行われているのか。そして投資家はどのような行動をとるべきなのか。よく考える必要がある。こんなに株価が下がっているのに、テレビのワイドショーでは宮崎議員の不倫騒動に貴重な電波が割かれている。アベノミクスにとって都合の悪い経済ニュースが目白押しである今、ベッキーや清原、そして宮崎議員のニュースによって、何かを覆い隠そうとしているのではないか。そんな勘繰りを入れたくなってしまう今日この頃である。でも、なんですべて文春なの? 
黒岩泰
株式アナリスト
配信元: 達人の予想