元祖SHINSHINさんのブログ
ミステリ界の閻魔大王 小林信彦
「十日間の不思議」は、舞台を、
クイーンの愛読者にはおなじみのラッツヴィル(架空の田舎町)にとっています。
一九四二年の「厄災の町」、四五年の「フォックス家」につづくライツヴィルものの第三作です。
ポケ・ミスにして三百頁以上の厚さで、登場人物は四、五人しか出ないので、
さぞかし面白いだろうと思ってよんでいったのですが、
よみ終えて呆然とするような失敗作でした。
このおよそ単純きわまる事件をクイーンのようにオツムのよろしい名探偵が
「不思議な事件だ」という方がよっぽどフシギなのですが、
読了するに及んで、わがE・クイーンがこういう小説を書いたことの方が、
はるかにフシギに思われてきました。
「フォックス家」から三年間の空白ののち、初めて筆をとったのがこの作品なのですが、
クイーンも、きっと戦争ボケからさめていなかったのでありましょう。
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★「地獄の読書録」
小林信彦著 ちくま文庫 1989.5.30.第1刷
「ミステリガイド 1959」P.37~38より抜粋
当時の推理文壇のメッカ「宝石」で行われた、
毎月出版される翻訳ミステリを片っぱしから紹介する企画を、まとめたものだという。
荻原魚雷の書籍で存在を知り、ネット購入してみた。
激しい活字中毒者である小林信彦は、
ミステリだけではなく、純文学などにも造詣が深く、
ミステリ紹介においては、そういった他分野にも発言が及んでいる。
月に10冊と定め嗅覚によって読破していき、
(全部読むのは不可能なので)
イイの悪いの批評していくのだが、
ネタバレにならないよう、十分に配慮して書かれている。
かつ、書き手を目指す人には特に、参考になる批評となっているのがミソだ。
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「ギャラウェイ事件」は、昨五八年秋に出たガーヴの最新作です。
「メグストン計画」も面白かったが、この「ギャラウェイ」も実に面白い。
無実の人間が罪におとされ、その肉親たちが協力して彼を助ける──というテーマは、
「カックー線事件」で使われていましたが、今回の作品も同様のテーマです。
ベストセラーにからむ推理小説のプロット・ヒョウセツ事件からおこった
センセーショナルな殺人事件を一組の男女がコツコツ解いていく。
正しく、クロフツの現代版ですが、作家の技量としては、ガーヴの方がずっとウマい。
発端に意外性をしかけておいて、いっきに物語る。
──その畳みこみのウマさは、松本清張を思わせます。
地味で、手がたい感じもよく似ています。
ラストには、珍しく活劇をおりこむというサーヴィスぶり。
誰が読んでも面白い小説として、すいせんする次第です。
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同書P.40~41より抜粋
因みに、この書籍で一番最初に推薦しているのは、
レイモンド・チャンドラー「長いお別れ」。
まだ56ページまでしか読んでないが、
すでに付箋が7枚ほど、ひらめいている状態だ。
その内に、オイラも荻原魚雷のように、
古本屋巡りをしているのかもしれない。
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