収益性
53
活発度
58
人気度
51
収益量
51
投稿量
94
注目度
62

元祖SHINSHINさんのブログ

最新一覧へ

« 前へ241件目 / 全1748件次へ »
ブログ

「太宰治の辞書」

二宮駅に着いたのは、六時半頃。

 

正ちゃんからすれば、その辺が、やり繰りして何とか早めに来られる限界になる。

滅茶苦茶に忙しく、学校を出られるのはいつもなら七時半から八時過ぎだという。

仕事というのは、やろうとすれば幾らでも出て来るものだ。

 

ホームに降りて見回すと、記憶よりずっと大きな駅だ。

二階の改札口の向こうに、正ちゃんが待っていた。

 

白いシャツに紺のスーツで、いかにも堅いお仕事の人らしい。

私を見て、《うむ》というように頷く。

「久しぶりだな」

相変わらず男っぽい横柄な口調だ。

 

「今度は、江美ちゃんも入れて、本当のお久しぶり会をやりたいね」

学生時代、三人娘で行動していたのが江美ちゃんだ。

九州の人になってしまったので、おいそれとは会えない。

 

私は、きょろきょろと辺りを見回す。

「どうした」

「何だか、立派になったような気がして」

「あたしが?」

「駅」

 

「そんなに変わってないぞ。コンビニが出来たくらいだ」

「エスカレーターは?」

「江戸時代にはなかったな」

 

商店街の歩道を、正ちゃんに誘導されて歩く。

途中から、車の通りの多い広場に出る。

 

「どこ行くの」

「魚のうまい店だ」

「シマアジ?」

正ちゃんの好物だ。

 

「最近は、マハタがいいな」

「マハタ・・・・・・」

海のない県で育った者としては、《何それ》と思う。

 

「夏のマハタはいいぞ。こいつを厚く切ってもらうんだ。

 身に弾力があって、上品な甘みがある。

 秋になっても、これが──」

 

*******************************************

 

この後、正ちゃんの実家で二人して飲むことになる。

二宮名物の《うでピーナッツ》も登場してきて、

オイラも二宮で飲みたくなるのだった。

 

★「太宰治の辞書」

  北村薫著 新潮社 1,500円+税 2015.3.30.発行

  「女生徒」P.77~78より抜粋

 

抜粋したところは、ほんのサブ材料的な部分だ。

男っぽい話し方をする正ちゃんが気に入ったのと、二宮の材料マハタがオモロイと思った。

それと、ユーモアのある会話も。

 

実はこの書籍、「乱読のセレンディピティ」的な、

太宰治に絡んだ推理エッセーになっている。

 

その途中、萩原朔太郎の詩や三島の話なんかも出てきて、

読んでいてなかなか楽しい。

文学に興味のある人には、ページが止まらないと思われる。

 

新聞書評で見て、オイラの嗅覚が働いた。

やっぱり、当たりだった。

 

太宰作品の抜粋が散りばめられている。

その文章《女生徒》には、たしかに萌える何かがあった。

でも、その実体は・・・。

 

ホントウにオモロイ。

しかもその主戦なオモロサに、副次的オモロサが蔦のように絡まり合って、

文学的な豊饒さが漂っている。

 

北村薫の作品を、もっと読んでみたいと思う。

 

PS:「サリンジャーと過ごした日々」が、日経の書評になっていた。

    先にブログにしていたオイラは、ちょいと鼻が高くなっている。

 

 

 

 

 

コメントを書く
コメントを投稿するには、ログイン(無料会員登録)が必要です。