イマージさんのブログ

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明治の相場はエグい! 銀行が担保株を勝手に売却?

相場を調べていたらなかなかおもしろい仕手戦があったのでメモしておきます。

大阪朝日新聞 1926.5.25-1926.6.25(大正15) 買占物語
http://www.lib.kobe-u.ac.jp/das/jsp/ja/ContentViewM.jsp?METAID=10018587&TYPE=PRINT_FILE&POS=1

・参宮鉄道の買占
明治20年台の末頃、小型株の参宮鉄道を買い占めるため、相場師と銀行家が結託します。
相場師である石田卯兵衛は浮動株が少ない参宮鉄道株を買い占め始めます。

それはたしか明治二十九年、世は戦捷に熱狂し、人は花に浮かれ酒に酔う春陽四月始めのこと、百三十六国立銀行(後の井上銀行)の応接室に、入口 のドアをかたくとざして密談にふける二人の男があった。一人は同銀行の支配人前田伊之助、他の一人は堂島の仲買人石田卯兵衛である。両人が何をささやき、 何を語らったか知るよしもないが、ただ前田の話に熱心に耳をかたむけている石田の緊張した顏面筋は、次第にゆるんで行って、銀行を出るときの石田の面上に は人知れぬ北叟笑みさえ浮んでいた。北浜の株式仲買人水谷鶴松商店から、参宮鉄道株の買注文が出るようになったのは、その翌日からのことである。


銀行とタッグを組んでいるため、株券を担保にしては銀行からどんどん借り入れて買い占めを行います。

石田が参宮鉄道の買占をやったその金穴は、後になって百三十六銀行であることがわかった、石田と銀行の橋渡しが支配人前田伊之助であったことは 申すまでもない。それでこの買占めは石田と前田がグルになっての仕事だと睨まれた。しかし、銀行は金を貸すのが商売だから、担保さえ持参すれば誰にでも金 を貸す。相場師に金を貸したからとて、その銀行の支配人が必ずしもグルであるとは限るまい。


買い付けられた参宮鉄道株はどんどん上がっていきます。

彼の買占めは日一日と露骨になり猛烈の度を加えていった。買注文が多ければ 値が騰るのは株も商品も同じことである。参宮鉄道株は石田の買進むにしたがって騰っていった。石田が買い始める前の参宮鉄道株は八十九円(五十円払込済) 台であったが漸次昂騰して九十円に乗せ、百円を突破して、翌五月には百三十円という新高値を出した。


売り方は高くなった参宮鉄道株を売り浴びせ始めます。

ところが水谷の店から出た買玉が石田のものだということがわかると「彼に幾干の力やある」とばかりに、四方八方から売玉をあ びせる。そこへ投機界にその人ありと聞えた天一坊の松谷元三郎が飛込んで来て石田と相呼応し「売屋の蚊とんぼ奴等、束になって来い」とばかりに買向ったか ら、この買占め戦の渦巻は大きくなって来た。石卯はもとより意地と頑固の化合物見たような男、大阪ばかりか京都、三重まで手を延ばして、あらん限りの参宮 鉄道株を買占めた。これがまことの戯言から出た真劒、今は売方も買方も必死である。 


しかし、石田が味方につけているのは銀行家の支配人、前田伊之助です。
資金力があるため、売り方は売る株を探すのに苦労します。
それにしても、売る株を探すために株式銘柄の地元まで行って探すとは・・・・明治相場師の意地は恐るべきです。

売方は受渡期を目前にして現株をそろえることが出来ず、そっと参宮鉄道の地元をあさって見たが、三重はもとより京都まで一足お先に買占派の手が まわっているので一枚の現物もなく、今は早や涙を呑んで買占派の軍門に降らぬばならぬ破目に陥った。


しかし、買い方の石田もなぜか、いくら買っても売り物が湧いてきます。
参宮鉄道は浮動株が少ないはず、首を傾げます。


石卯と天一坊が買占めた参宮鉄道株は既に十万余、浮動株はおろかのこと、参宮鉄道の 株という株は最早全部買ってしまったはずであるのに、それが何所からともなく出て来るので、軍資の調逹もだんだん困難になって来た。買占派は不審の小首を かたげだした。 
 最早世の中にないはずの参宮鉄道株が、何所からともなく出て来る―これを不思議といわずして他に不思議があろうか。買占に夢中になっていた天一 坊と石卯が漸く我にかえって、手にある玉をかぞえながら「どうも不思議だ」「全く妙だ」をくりかえしているとき、百三十六銀行の支配人室には相場の神様 が、鼻のさきへ小皺をよせて「クスリクスリ」と一人笑壺に入っていた。


何と味方かと思っていた百三十六国立銀行、担保として受けていた株が高くなったのをいいことに勝手に売却していたのです。

相場の神様は早くもこの買占め戦の結果がどうなるかということを見ぬいて、銀行に怪我のないよう、石卯から担保に取った参宮鉄道株の高いとこ ろをドンドン売っていたのである。これではまるで底のない桶へ水をくみ込んでいるようなものだ、如何に石卯と天一坊が合縦連衡で買まくっても、容易に売方 の城は落ちないわけである。


如何に高利を貪っても、買占のために値が出た株を担保に取って金を貸すなどは危険至極な話である。それを百三十六銀行が平気な顏で石卯に買占資 金を融通していたのは、裏面でこうしたカラクリをやっていたからだ。後に参宮鉄道は売買停止になって相場がつぶれ、その株式は惨めなおど暴落したが、百三 十六銀行には少しも怪我がなく、反って人の知らないウマいことをしたといわれている。


結局は買い方が儲けることになるのですが、銀行が担保を勝手に売却するとは、明治とはすごい時代です。
最も、この記事が書かれた大正時代に入ると流石にそういったことは行われていなかったようです。

とにかく昔の銀行屋さんというものは思いきったことをしたものである。いくら買占に失敗が付物だからとて、まだどうなるか判りもせぬ相場の先を見 越して、ひとさまの預り物を叩き売るなんて、とても乱暴なことをしたものである。相場師に担保をぬかれて裁判事件だの、監獄沙汰だのといって騒ぎまわって いる今時の銀行屋さんなんどは、到底足もとへだって寄りつけることじゃない。


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