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元祖SHINSHINさんのブログ

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作家の独り言

(略)事実を書く場合自分にはよく散漫に色々な出来事を並べたくなる悪い誘惑があった。

 色々な事が憶い出される。あれもこれもと云う風にそれが書きたくなる。実際それらは何れも多少の因果関係を持っていた。然しそれを片っ端から書いていく事は出来なかった。書けば必ずそれらの合わせ目に不十分な所が出来て不愉快になる。自分は書きたくなる出来事を巧みに捨てて行く努力をしなければならなかった。(略)

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(略)自分にはもう父との不和を材料とした「夢想家」をその儘に書続ける気はなくなった。自分は何か他の材料を探さねばならなかった。材料だけなら少しはあった。然しその材料へ自分の心がシッカリと抱きつくまでには多少の時が要った。多少の時を経ても心が抱き付いていかぬ事もある。そういう時無理に書けばそれは血の気のない作り物になる。それは失敗である。十五六日までの期日に何か物になる程のものが出来るかしら?(略)

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★「和解」

  志賀直哉著 新潮文庫 H23.11.25.九十八刷改版

  P.20~21、P.137~138より抜粋

 

安岡章太郎の解説によると、「暗夜行路」は志賀直哉の代表長編小説だが、それは失敗作だという。

ともに私小説なのだが、あとから書いた「和解」にあるように、父との和解が成立してしまい、

「暗夜行路」を書く理由が、書いている途中でなくなってしまったことに原因があるという。

ということから、後段の「夢想家」という小説は、「暗夜行路」を指していることになる。

 

前段の話では、「削って、削って」という北方謙三の主張を、さらに拡大した意味に取れる。

文章だけではなく、材料にもそれが及ぶということだ。

村上春樹がやった「1Q84」のおける、まるで無関係な内容の文章をところどころに挟み込むという、レイモンド・チャンドラーの「ロング・グッドバイ」を参考にしたジャズ的で即興的な遊びは、以上のことが出来てからでないと茶番になってしまうということだろう。オモロイので、つい真似したくなるけれど。

 

後段の話では、やはり「缶詰から名作は生まれない」という事実を裏付けるような発言となっている。

空白は、作品を発酵させるのに大切な時間なのだろう。

 

八十八歳で他界された山崎豊子は、試しに私小説から書き始めたらしい。

なるほど私小説は自分の体験したことなので、取材が要らない。

ファンタジーやミステリーのように、工夫しなくてはならないことも少ない。

初心者が書き始めるには、私小説が適しているのだろう。

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