元祖SHINSHINさんのブログ

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永井荷風は稲荷がお好き

わたくしがふと心易くなった溝際の家・・・・・・お雪という女の住む家が、この土地では大将開拓期の盛時を想起(おもいおこ)させる一隅に在ったのも、わたくしの如き時運に取り残された身には、何やら深い因縁があったように思われる。

 

其家は大正道路から唯(と)ある路地に入り、汚れた幟の立っている伏見稲荷の前を過ぎ、

溝に沿うて、猶奥深く入り込んだ処に在るので、表通りのラディオや蓄音機の響きも素見客(ひやかし)の足音に消されてよくは聞えない。

夏の夜、わたくしがラディオのひびきを避けるにはこれほど適した安息処は他にはあるまい。

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★「墨東綺譚」

  永井荷風著 新潮文庫 324円+税 昭和26.12.25.発行、平成23.10.5.八十二刷改版

  P.49より抜粋

 

渡部直己の書いた「日本小説技術史」における「腕くらべ」抜粋のように(P.349~350)、

下品と評されるくらいエロい話が「墨東綺譚」かと思っていたのだが、

まったく違っていた。

 

永井荷風の最高傑作といわれている作品で、映画にもなっているとのこと。

ネットでも、この作品に好意を持った諸氏がその思いを綴っている。

荷風が書いたという現地の地図なども公開されている位なので、

ひょっとしたら、かなり私小説に近い小説なのかも知れない。

 

また作中、主人公・大江匡の小説を書いている描写が出てくる。

今、米国でヒットし邦訳もされている「二流小説家」と構成がちょいと似ている。

 

不思議だったのは、抜粋したように伏見稲荷が数カ所出てくること。

これも河合隼雄のいうコンステレンシーなのだろうか?

つくづくオイラは伏見稲荷に縁があるようだ。

 

ネットによれば、この地での伏見稲荷は現在なくなっているが、

作中にもうひとつ出てくる玉ノ井稲荷は健在な模様。

http://milkcafe68.blog5.fc2.com/blog-entry-28.html

「墨東綺譚を歩く」

 

大江匡こと恐らく永井荷風は、作中で小説の書き方を少々詠じているので、

ありがたくそのエッセンスを頂戴しておこうという次第。

 

家政婦は三田文学、なんちゃって。

 

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