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反自由貿易論2

駄文、駄論というのは往々にして饒舌なものです。 中身が不合理だから、簡潔に書けない。 饒舌にして誤魔化す。 詐欺師は大抵そうするし、マルクスの資本論とかもそうなってます。

 

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(4)TPP以外のFTAが具体化していないから、これしかない

 これは間違いである。実は、日中韓FTAの産官学共同研究会(事前交渉)は、2011年12月に報告書作成作業を完了し、2012年から政府間交渉に入る準備を進めている。いよいよ日中韓FTAが具体的に動き出す。TPPのような極端なゼロ関税ではなく、適切な関税と適切な国内対策の組合せによって、全加盟国が総合的に利益を得られるような妥協点を見いだせる。

 日本とEUとのFTAも、交渉の範囲を確定する予備交渉が開始されることになった。日本やアジアにとって、米国やオーストラリアといった新大陸に比べて相対的に共通性の高いEUとのFTAは真剣に検討する必要がある。EUは、適切な関税と適切な国内対策の組合せによって「強い農業」を追求する政策を実践しているので、TPPとは違い、農業についての着地点を見いだすことは可能であろう。

 このように、柔軟性を望めないのに利益は小さいTPPではなく、アジアやEUとの、柔軟性があり、かつ、日本の輸出を伸ばせる可能性も大きいFTAを促進する方向性が、日本にとって現実的で利益も大きいと思われる。ただしその場合は、米国との関係悪化を回避しつつ進めなくてはならないという非常に難しいバランスも要求される。そもそも、日本は、米国と中国という2つの大国の間で微妙なバランスを保ちつつ発展していく必要がある。米国との関係が非常に重要であることは間違いないが、TPPに傾斜しすぎるわけにはいかないのである。現実的には、TPPの動向は注視しつつ、日中韓FTAや日EU・FTAの準備を進めるという選択肢が考えられる。

(5)「TPPおばけ」で根拠のない不安を煽っている

 これは間違いである。TPPが今までのFTAと決定的に違うのは、関税撤廃などにおいて重要品目の例外扱いなどが原則的に認められない点である。また、非関税措置といわれる制度やルールの廃止や緩和、共通化も目指す。つまり、協定国の間に国境がない(シームレス)かのように、人やモノや企業活動が行き来できる経済圏を作ろうというのがTPPの目標である。

 しかも、たとえば米国企業が日本で活動するのに障害となるルールがあれば、米国企業が日本政府を訴えて賠償請求とルールを廃止させることができる条項も盛り込まれる。いわゆる「毒素条項」と呼ばれ、NAFTA(北米自由貿易協定)でも、韓米FTAでも入っている。経済政策や産業政策の自主的運営がかなりの程度制約される可能性も覚悟する必要がある。

 基本的に、米国など外国企業が日本で活動する場合に、競争条件が不利になると判断される公的介入や国内企業への優遇措置と見なされる仕組みは廃止が求められるということである。したがって、郵政民営化は当然であるし、医療における公的医療保険も許容されないということになる。

 ある面では、TPPは、EU(欧州連合)のような統合を、米豪と日本など、まったく異質な国が、数ヶ月で達成しようとしているようなものである。EUが形成されるのに費やされた60年という長い年月を考えれば、それと類似のレベルの経済統合を数ヶ月のうちに一気に達成しようというTPPの凄まじさがわかる。

 現在9カ国が参加して交渉中のTPPは、すでに2006年5月にチリ、シンガポール、ニュージーランド、ブルネイの4ヶ国で締結されたP4協定がベースになることも忘れてはならない。日本では、TPPがどのような協定になる可能性があるのかについて、政府は「情報がない」と言って国民に何も説明していないが、このP4協定に近いものになるのだから、少なくともP4協定についてなぜもう少し国民に説明しないのかということが問われる。

 P4協定は160ページにも及ぶ英文の法律である。P4協定は、物品貿易の関税については、ほぼ全品目を対象として即時または段階的に撤廃することを規定している。また、注目されるのは、政府調達やサービス貿易における「内国民待遇」が明記されていることである。内国民待遇とは、自国民・企業と同一の条件が相手国の国民・企業にも保障されるように、規制緩和を徹底するということである。たとえば政府調達では、国レベルだけではなく地方レベルの金額の小さな公共事業の入札の公示も英文で作り、TPP加盟国から応募できるようにしなければならなくなる。サービス貿易については、金融、保険、法律、医療、建築などの各分野で、看護師、弁護士、医者等の受け入れも含まれることになるだろう。金融についてはP4 協定では除外されていたが、米国が参加して以降、交渉分野として加えられている。

 もう一つ、参照すべきは、韓米FTAである。米国は、日本がTPPの内容を考える上で、アジアとの直近のFTAとして、韓米FTAを参照してほしいと指摘している。つまり、TPPは、P4協定、韓米FTAの内容を、さらに強化するものとなるということである。韓米FTAでは、投資・サービスの原則自由化(例外だけを規定する「ネガ」方式)、「毒素条項」に加え、エンジニア・建築家・獣医師の資格・免許の相互承認の検討、郵政・共済を含む金融・保険の競争条件の内外無差別化(公的介入、優遇措置の排除)、公共事業の入札公示金額の引き下げなども入っている(「付録」参照)。これらが、強化される形で、TPPで議論されることになる。

 遺伝子組み換え食品についても、米国が安全だと科学的に証明している遺伝子組み換え食品に対する表示義務を廃止するよう我が国が求められるであろうことは、現在9ヵ国のTPP交渉の中で、オーストラリアやニュージーランドが、すでに米国から同じ要求を受けていることからわかる。

 また、以前から米国は、米国牛肉はBSE(狂牛病)検査をしっかりやっていて安全だから輸入規制はやめるよう主張している。だが、米国人の監督による米国食料市場に関するドキュメンタリー映画『フード・インク』を見てもわかるように、狂牛病の検査は十分に行われていない可能性が高い。だからこそ、日本は独自のルールを設定して国民の命を守っているのである。だが、TPP参加とともに、それは駄目だという圧力が高まる。韓国は、韓米FTAの協定の中ではなく、韓米FTAをまとめるための「お土産」として、月齢規制を緩和した(なんと日本は、10月に早々と自ら緩和表明し、服従姿勢を示し始めた)。
以上のように、根拠なしに不安を煽るような「TPPおばけ」ではなく、しっかりした根拠に基づいて、危険性を指摘しているのである。推進する方々の「アジア太平洋の貿易ルールに乗り遅れる論」「とにかく入って、いやなら脱退論」こそが、根拠のない「脅し」や意図的な詐欺である。

(6)例外は認められるから大丈夫、不調なら脱退すればよい

 最近のTPP推進議論でよく聞くのは、「とにかく入ってみて交渉すれば、例外も結構認められる。不調なら交渉途中で離脱すればよい」といった根拠のない「とにかく入ってしまえ論」である。しかし、「すべて何でもやります」という前提を宣言しないと、TPP交渉には入れない。カナダは、「乳製品の関税撤廃は無理だが、交渉に入りたい」と言って門前払いになっている(一応は「全ての品目を交渉の対象にする」と伝えたが、「乳製品の問題にカナダが真剣に取り組むという確信が持てない」という指摘が既参加国からあり、認められなかった可能性もある)。

 ただ、米国を含めた世界各国が、国内農業や食料市場を日本以上に大事に保護している。たとえば乳製品は、日本のコメに匹敵する、欧米諸国の最重要品目である。米国では、酪農は電気やガスと同じような公益事業とも言われ、絶対に海外に依存してはいけないとされている。でも、米国は戦略的だから、乳製品でさえ開放するようなふりをしてTPP交渉を始めておいて、今になって、米豪FTAで実質例外になっている砂糖と乳製品を、TPPでも米豪間で例外にしてくれと言っている。オーストラリアよりも低コストのニュージーランド生乳については、独占的販売組織(フォンティラ)を不当として、関税交渉の対象としないよう主張している。つまり、「自分より強い国からの輸入はシャットアウトして、自分より弱い国との間でゼロ関税にして輸出を増やす」という、米国には一番都合がいいことをやろうとしている。

 こうした米国のやり方にならって、「日本も早めに交渉に参加して例外を認めてもらえばいい」と言っている人がいるが、もしそれができるなら今までも苦労していなない。米国は、これまで自身のことを棚に上げて日本に要求し、それに対して日本はノーと言えた試しはない。特にTPPは、すべて何でもやると宣言してホールドアップ状態で参加しなくてはならないのだから、そう言って日本が入った途端にもう交渉の余地はないに等しい。この交渉力格差を考えておかなければならない。米国は、輸出倍増・雇用倍増を目的にTPPに臨んでいるから、日本から徹底的に利益を得ようとする。そのためには、たとえばコメを例外にすることを米国が認める可能性は小さい。交渉の途中離脱も、理論的に可能であっても、実質的には、国際信義上も、力関係からも、不可能に近い。

 また、「例外が認められる」と主張する人の例外の意味が、「コメなら関税撤廃に10年の猶予があるから、その間に準備すればよい」という場合が多い。これは例外ではない。現場を知る人なら、日本の稲作が最大限の努力をしても、生産コストを10年でカリフォルニアのような1俵3,000円に近づけることが不可能なことは自明である。現場を知らない空論は意味がない。

 なお、日豪FTAはすでに政府間交渉をしており、多くの分野で例外措置を日本側も主張しているが、その日本がTPPでは、同じオーストラリアに対して例外なしの自由化を認める、というまったく整合しない内容の交渉を同時並行的に進めることが可能なのか、この矛盾に直面する。かりに、米国の主張にならって、既存のFTA合意における例外はTPPに持ち込めるから、日豪FTAなどを既存の2国間合意を急げばよい、という見解もあるが、それではTPPというのは一体どういう実体があるのかということになる。

(7)所得補償すれば関税撤廃しても大丈夫

 「所得補償すれば関税撤廃しても大丈夫」という議論があるが、これも間違っている。現状のコメに対する戸別所得補償制度は、1俵(60kg)当たり平均生産コスト(13,700円)を常に補償するものではなく、過去3年平均価格と当該年価格との差額を補てんする変動支払いと、1,700円の固定支払いによる補てんの仕組みであるから、米価下落が続けば補てんされない「隙間」の部分が出てくる。したがって、TPPでコメ関税を10年間で撤廃することになれば、さらなる米価下落によって「隙間」の部分がますます拡大していく。

 もし、平均生産コストを全額補償する「岩盤」をコメ農家に手当すると想定すればどうなるか。たとえば、コメ関税の完全撤廃後も現在の国内生産量(約900万トン)を維持することを目標として、1俵当たり14,000円のコメ生産コストと輸入米価格3,000円との差額を補てんする場合の財政負担額を試算してみると、

《コメ関税ゼロの場合》
(14,000円-3,000円)÷60キロ× 900万トン=1.65兆円

となる。概算でも約1.7兆円にものぼる補てんを毎年コメだけに支払うのは、およそ現実的ではないだろう。牛乳・乳製品や畜産物などコメ以外の農産物に対する補てんも含めると、財政負担は少なくともこの2倍近くになる可能性がある。さらには、1兆円近くに及ぶ関税収入の喪失分も別途手当てしなくてはならないことを勘案すれば、毎年4兆円という、ほとんど不可能に近い多額の財源確保が必要となる。

 これほど膨大な財政負担を国民が許容するならば、環境税の導入、消費税の税率の引上げなどによる試算から、具体的な財源確保の裏付けを明確にし、国民に約束しなければならない。もし空手形になれば国民に大きなリスクをもたらし、世界から冷笑される戦略なき国家となりかねない。「とりあえずTPPに参加表明し、例外品目が認められなければ所得補償すればよい」といった安易な対応は許されないのである。

 一方、もしTPPが関税撤廃の例外を認める形で妥結される可能性があるならば、それを踏まえた現実的な議論の余地も生まれる。たとえば、コメの例外扱いが認められて関税率が250%とされた場合は、補てんのための財政負担額は、

《コメ関税250%の場合》
(14,000円-10,500円)÷60キロ× 900万トン=5,250億円

となる。

 ただし、以上の試算で用いた輸入米価格3,000円という仮定が低すぎるのではないかとの指摘もあるだろう。たとえば、平成22年の中国産SBS(売買同時入札方式)米の入札価格は玄米換算で8,550円に達しているので、輸入米価格を9,000円程度と見込めば、

《高い輸入米+関税ゼロの場合》
(14,000円-9,000円)÷60キロ× 900万トン=7,500億円

となる。さらに、関税撤廃を10年で行う猶予がある場合、その間の構造改革によって補てん基準の生産コストを10,000円まで引き下げられると見込めば、

《構造改革を見込んだ場合》
(10,000円-9,000円)÷60キロ× 900万トン=1,500億円

と、許容範囲の財政負担におさまることも考えられる。こうした試算が、ゼロ関税でも対応可能だという根拠として出されてくるであろう。

 しかし、福岡県稲作協議会の黒竜江省調査(2010年7月30日〜8月4日)によると、現地のコメ輸出会社が受け取っている日本向け輸出価格は1キロ当たり3.6〜3.8元(約54〜57円)、1俵当たりで約3,200〜3,400円程度であり、SBSで9,000円程度となっている現在の価格は、輸入枠があるため中国側がレント(差益)をとる形で形成された高値と判断できる。したがって、輸入枠が撤廃されればレントを維持できなくなることを考えると、輸入価格を現状の9,000円のままと見込むのは危険である。また、農水省資料によれば、各国の米価は、米国 2,880 円、中国 2,100 円、オーストラリア 2,640 円(2008年の玄米換算1俵当たり生産者受取価格)となっている。TPPについては、中国産ではなく、米国産との比較が必要だが、米国産でも輸入米は3,000円程度を目安にした方がよいと思われる。
それから、先述のとおり、「ゼロ関税になるまでに10年間の猶予があれば、それまでに規模拡大して生産コストを下げれば、補てんの負担は大幅に縮小される」という議論もあるが、机上の試算を勝手にされても困る。規模拡大やコストダウンの努力はもちろん必要だが、日本のこの土地条件で、10年間で米の生産コストを半分にできるかというと、非常に難しい。

 すると、次に出てくるのは、「補てん財源が足りなければ、補てんの対象を大規模農家などに絞ればいい」という主張である。これでは、日本全国に広がる中山間地の農村はどうなるのか。慎重な配慮が求められる。

 また、以上の試算では、国内生産量を現状水準で維持することを前提としているが、もし「新基本計画」が掲げている食料自給率50%への引き上げ目標も同時に達成するならば、さらに膨大な財政負担が必要になる。関税撤廃が可能かどうか、あるいはどこまで引き下げることが可能かについては、必要な財政負担額とセットで検討する必要がある。そうした検討もなく、所得補償するからゼロ関税でも大丈夫と言うのも、コメ関税は一切手をつけられないと言うのも極論であり、現実的な解は、その中間のどこかに、適切な関税水準と差額補てんとを組合せることによって見いだすことができると思われる。しかし、そうした柔軟性はTPPには望めない。

(8)日本のコメは品質がよいし、米国やオーストラリアの短・中粒種のコメの生産力は
それほど高くないので、関税撤廃しても、日本のコメ生産が極端に減少することはない。

 これは間違いである。カリフォルニア米が比較的おいしいというのは、米国滞在経験者なら、共通認識であり、値段とのバランスを考えれば、広く日本の消費者に受け入れられる可能性は高い。

 確かに、短・中粒種のコメ生産力が世界にどれだけあるのかについては慎重に検討すべきであるが、たとえば、オーストラリアは今、水の問題でコメは5万トンくらいしか生産できていないが、過去には、日本でもおいしく食べられるコメを100万トン以上作っていた。中国では、黒竜江省だけでも日本の全生産量とほぼ同じ800万トンのコシヒカリを作っている。オーストラリアも米国もそうだが、どの国でも、日本でのビジネス・チャンスが広がれば、生産量を相当に増やす潜在力があるし、日本向けの食味に向けての努力も進むであろう。米国も短・中粒種はカリフォルニアしかつくれないわけでなく、日本で売れるビジネス・チャンスが広がれば、アーカンソーでも生産できる。そうなれば、生産力は格段に高まる。だから、供給余力の推定や品質向上の度合いの推定はなかなか難しい。ただ、普段は、ビジネス・チャンスに応じて経営は対応してくることを重視する人達が、こういう場合だけ、現状固定的に、日本の品質はよいし、外国の生産力は小さい、と主張するのは、やや首をかしげる。

 いずれにしても、時間の経過とともに変わってくるし、不確定な要素が非常に多いので、日本のコメ生産が9割減少するとも言い切れないし、ほとんど減らないとも言えない。だからこそ、ゼロか百かの議論ではなく、極端なTPPではなく、アジアにおいて柔軟かつ互恵的な自由貿易協定を拡大する路線が現実的だということである。

 

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    マクロ分析
登録日時:2013/03/22(07:20)

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