ユリウスさんのブログ

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原子力の依存度? -10年後には貢献度と言われているかも-

「直感によって判断する習慣のついている人々は、推理にかんすることがらについては何もわからない。なぜなら彼らはまずひと目で見抜こうとし、原理を求める習慣がついていないからである。」  -パスカル著「パンセ」より-

 福島原発は東北地方太平洋沖地震とこれに伴う津波によって国際原子力・放射線事象評価尺度(INES)レベル7の極めて深刻なシビアアクシデントが発生した。
 この国難ともいうべき未曾有の災厄に対して、時の総理大臣管直人は事故の究明に手をつける前に早々と「脱原発」発言をし、後で個人的見解と見苦しい釈明をした。

 後を継いだ野田政権は「討論型世論調査」なるものをはじめて、22日にその結果がでた。(結果は予想されたとおり)
朝日新聞の記事による。
 政府がエネルギー政策の意見を聞いた討論型世論調査の結果が22日、まとまった。2030年の電力に占める原発割合を「0%」「15%」「20~25%」とする三つの選択肢のうち、0%支持が討論や学習を経て32.6%から46.7%に増え、最も多かった。エネルギーには「安全の確保」を重視する人が増えたためだ。
 15%支持は16.8%から15.4%に減り、20~25%は13.0%のまま横ばいだった。政府は「国民的議論」を経てエネルギー政策を決めるとして討論型世論調査をとり入れており、0%支持の増加は政策決定に大きな影響を与える。

 翔年は思う。政府はまたもや手順の誤りを犯している。まずやるべきは福島原発の事故原因の究明、そこから得た教訓の検証である。政府事故調は福島原発以外の女川原発や東海第二原発が地震と津波に襲われた時、どのような状況下におかれ、どのようにして安全に停止状態にまで持ち込めたのか、検証して国民に知らせるべきなのに、それをしていない。(故意にしていないのなら許せません)
 政府がやるべき第一は原発が許容できる安全なシステムであるのかどうか、自らがが判断し、国民に説明することです。そのためには、独立した原子力安全庁の設置や独立した原子力安全委員会の人事をキチンとやって一日も早く発足させることであるはずです。極論すれば、原発依存率は0%か、15%か、25%がいいか? というようなアンケートは民間の調査会社に委託すればいいことなのです。例えば、消費税率は0%、5%、10%、15%、20%のどれを望みますかという調査をしたら、どのような結果が得られるか? (賢明な読者のみなさんなら調査しなくてもお分かりとおもいます)


 さて、囲碁友達のY.T.氏から大前研一著「原発再稼動 最後の条件」を借してもらった。翔年はこれまで原発について、素人が原子力の安全について議論を尽くすには限界があるのは承知の上で、さんざん物を言ってきました。この本の難問題に取り組む姿勢には全面的に賛成です。写真、図表も多く挿入されており、技術的な事項を避けることなく、分かりやすく読者に訴えているたいへん良い本と思います。

原発再稼働最後の条件著者:大前研一価格:1,995円(税込、送料込)楽天ブックスで詳細を見る原子力発電所のシステムはどうなっているのか?
安全はどのようにして担保されるのか? 
福島第一原発は電源と冷却源がさえあればメルトダウンしなかった? 
事故から学ぶべきことは何か?
福島原発より地震による衝撃が大きかった(想定以上)女川原発は何故大丈夫だったのか? 
だれでも問題の本質を見ることの大切さが分かる本です。お勧めします。

 結論の「電源」と「冷却源」の喪失が福島第一原発の致命傷となったという説明は、福島第一原発、同第二原発、女川原発、東海第二原発を比較した表(一覧性がすばらしい)とあいまって説得性が高いです。また、東電の採用しているBWR型と関電の採用しているPWR型システムの違いもキチンと説明されている。(大事なことなのに、今までこのことに触れたメディアは皆無でした)
 さらに、「原子力発電所の複数プラントを稼動するリスクを忘れるな」など、政府事故調や国会事故調に無い、示唆にとんだ指摘もあり、今後原発問題を考える時の議論の出発点になると思います。是非、手にとって読んでいただきたいと思います。
(この本はB5二冊を横に並べた大きさです。横長の比較表で各サイトの状況などを一覧して理解できるように工夫されているからと思います)



(参考)
1 原子力の依存率の高い国ベスト20
(2008年に国際エネルギー機関(IEA)が公開したもので、各国の消費電力量と総発電量、そして原子力による発電量から原子力発電への依存度を算出、ちょっと古いデータですがご容赦ください)
1位.フランス(76.4%)
2位.リトアニア(71.1%)
3位.スロバキア(57.6%)
4位.ベルギー(53.6%)
5位.ウクライナ(46.6%)
6位.アルメニア(42.6%)
7位.スウェーデン(42.5%)
8位.スイス(40.1%)
9位.スロベニア(38.2%)
10位.ハンガリー(37.0%)
11位.ブルガリア(35.0%)
12位.韓国(33.8%)
13位.チェコ(32.1%)
14位.フィンランド(29.6%)
15位.日本(23.8%)
16位.ドイツ(23.3%)
17位.アメリカ(19.1%) → 発電電力量は8091億kwhは世界一の記録。
18位.スペイン(18.7%)
19位.ルーマニア(17.2%)
20位.台湾(17.1%)


2 原発に積極的な国、消極的な国はどこか?
推進国:  フランス、ロシア、中東、中国
→ フランスは独立国として他国に依存しない政策(エネルギー、食料)を取っている。中東、中国、ロシアは今後のエネルギー需要の増大と化石燃料(石炭、石油、LNG等)の枯渇後の世界を見ていると思われる。

脱原発国: ドイツ、スイス、イタリア
→ ドイツは徹底して脱原発という人もいるけれど、実はフランスから電力を輸入しているし、今後も期待できる地理的文化的位置にある。また、核エネルギーの技術温存を図って、核融合の研究予算はちゃんとつけている賢明さも持ち合わせている。

慎重国: 日本、東南アジア
→ わが国は水力をはじめとする自然エネルギーしかない。自然エネルギーだけではやっていけない。東南アジア諸国はわが国の原発の事故原因やそこから学ぶべきことは何なのか、わが国の動向を注視しているはず。地震国のわが国が原発システムの安全技術を確立し、それを国際社会に発信すれば、これらの国々に大きく技術貢献できる。

3 原発依存率? 
 原発依存率という言葉は、そもそも脱原発を前提にした言葉ではないのか? (笑)
 我が国は国際社会に対して3年前、鳩山首相が、国連気候変動サミットで「2020年までに温室効果ガスを1990年比25%削減する」という中期目標を表明したのは記憶にあたらしい。合わせて、途上国の温暖化防止対策を支援する「鳩山イニシアチブ」も提唱したはずなんだけど、日本は国際公約を言いっぱなしでいいのだろうか? 翔年は民主党の腰のさだまらない迷走政治がたいへん恥ずかしい。(国際的信頼の失墜)
 原発の安全性を徹底的に議論し、安全が担保されることができるという結論に達したら、それを支える技術を支援し、安全組織を作り直し、改めてエネルギー政策の中で政府が原発の貢献率を決めればいい。東南アジア諸国もその検討結果を待っていると思う。
 ともかく、原発貢献率が正しい用語ではないかと思う。




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