ユリウスさんのブログ

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根本から考える(9) - ユーロ危機は去るか?

 ヨーロッパの通貨危機はいつまで経っても治まらない。構造的な問題を抱えた危機は簡単に治まらない危機だと言うしかない。先の主要20ヶ国・地域(G20)首脳が集まった会議(18日、19日)では下の以下の対策が中心議題だった。

○ ギリシャ新政権がユーロ圏と連携し、改革に取り組むことを歓迎。
→ しごくあたりまえのこと。ただし、何をどのように取り組むかはギリシャ国民に選ばれたギリシャ政府に任されている。

○ 欧州危機の封じ込めへユーロ圏各国はあらゆる措置をこうじるべき。
→ あらゆる措置をこうじるといっても、具体的にはどうするのかはっきりしない。必要な項目も優先順位も各国の裁量に任されている。金融監督体制の強化や金融機関の破たん処理手続きの一本化等の検討はするでしょうが、これは市場に対して「これで安心してね!」と言っているのだけのこと。後で詳しく述べますが、このような弥縫策(ビボウサク)では危機は治まらないはずです。

○ IMF(International Manetary Fund)の資金基盤をさらに増強。
→ 隣の火の粉が降りかからないようにする対策でこれは必須でしょう。ドイツやフランスの銀行はギリシャやスペインの国債を既に相当額買い込み持っているらしい。これが暴落して紙くずになるようだとヨーロッパのみならず世界経済にサブプライムショック以上の恐ろしい結果を撒き散らすことになる。

○ 持続可能な成長と雇用の促進がG20の最優先課題。保護主義も回避すべき。
→ あたりまえのこと。行過ぎた緊縮財政は止めようということ。経済成長を促進するためには貿易の自由化が欠かせないということ。これも各国の裁量にまかせるしかない。

○ 為替レートの柔軟性向上を確認。相場の過度な変動が経済に悪影響を与えることを再確認。
→ 相場に過度な変動を与える要因と言えばギリシャ政府(財政破綻を隠蔽していた)やスペインやイタリアの経済財政政策なのです。市場は原因や不安な要素が何もなければ、過度な変動はしない。因果関係が逆ですね。問題はユーロ圏の国々にあるのであって、市場にあるのではないです。



 さて、上に見てきたようにG20の首脳が集まって危機を治めるために色々と話し合い、ユーロ圏はあらゆる措置を実施すると宣言したのでしたが、果たしてこれで危機を回避できできるのでしょうか? 翔年はできない相談ではないかと思っています。 

 それをハッキリさせるには、そもそも「国家」とは、「通貨」とは何であるかと言うことからアプローチしてユーロの本質を見なければなりません。


国家とは: 権力が領域と人民を内外の干渉を許さず統治する存在である。

通貨とは: 国家によって価値を保証された決済のための価値交換媒体である。

 このことから、「通貨は国家なり」とも言われる。独立した主権国家が保証しており、それを信用している国民がいて成り立っている「通貨」ではあるが、グローバルに多様な貿易が行われている現在、国際通貨市場における「市場メカニズム」の働きで、各国の生産性水準の絶対的な較差に照応して各国の通貨の為替レートが決まってくる。これは生産性が低い国の通貨の対外為替レートは割安に、生産性が高い國の通貨の対外為替レートは割高に決まることを意味する。要するに通貨価値は国家の経済力と不可分なのですね。

 ところがユーロはこのような基本的通貨からはみ出した存在で、ヨーロッパの17カ国が国家とは切り離して地域通貨としてユーロを持っている。これは同じ文化圏のヨーロッパ諸国が共通の通貨持つと言う歴史的にも画期的な第一歩ではありましたが、英国のサッチャー元首相がユーロへの参画に反対したように、この制度は欧州統合の理想実現のためのプロセスではありましたが、当初から構造的欠陥を内包している制度であったのです。 ようするに、地域で通貨を統合すれば各国が独自の金融・財政政策で自国の経済を守ることができなくなるからです。その上、国際通貨市場における「市場メカニズム」も働きません。そうなると、生産性が絶対的に低い国の通貨の対外為替レートは割安に、生産性が絶対的に高い國の通貨の対外為替レートは割高に決まる、つまり、経済力の強い国は通貨高に、弱い国は通貨安になる自動調整によって、国の収支が自動的に調整されるというスタビライザー機能がなくなってしまったのでした。



 その結果何がおこったか。
 もともと経済力の弱いギリシャ、ポルトガル、スペイン、イタリアなどラテン系の国家は、「負け組」となっって行った。そして、ユーロ危機が騒がれるたびにユーロ安が進み、おかげでドイツ製品の競争力が世界で高まるという結果になっている。本来なら同じ通貨圏の強い国に労働力が移動するか、稼いだ資金を強い国が弱い国へ移す必要があるが、国境があるためにこの調整はなかなかスムーズにいかないのですね。

 わが国だって経済的に強い地域と弱い地域はある。例えば弱い代表は沖縄県や山陰地方の県、強い代表を東京都とすれば、わが国では仕事を求めて東京へ人口は移動するし、政府は東京都民から徴収した税の相当量を地方交付税として弱い県に移して調整している。国会議員の数にしても弱い県は憲法違反状態まで一票の価値を高めて、地方の要望に沿う形の政策を国会で通しやすくしている。(これは別の弊害を生んでいるが今は触れない)
 この調整方法をユーロ圏に適用するとドイツが稼いだお金のいくらかをギリシャに移転することだが、国境があるせいで、ドイツの国民感情はこれを許さない。弱い国の発行する国債を買って支援するのが関の山だ。だが、もう限界に達して今や市場から警告が発せられているのが現状である。


 冒頭に掲げたG20のどの処方箋も、この構造的欠陥を是正するものではなく、当面を凌ぐだけの施策であるからには、ユーロに明るい将来展望は見えてこない。ヨーロッパに再び戦争を起こしてはならないという理想主義のもとに始まった欧州統合の道半ばで、経済破綻がが起こりそうな事態に至ってしまった。これを平穏に治める施策を見出すのは容易ではありません。知恵者が何のかんのとやっても、それぞれの国家に通貨政策がないようでは、弱い国々はますます弱くなるしかなく、こういう事態がいよいよ酷くなれば、やはりユーロの存続は難しいように思えてなりません。



※1 G20: 主要国首脳会議(G8)に参加する8か国、欧州連合、新興経済国11か国の計20か国・地域からなるグループである。20か国・地域首脳会合(G20首脳会合)および20か国・地域財務大臣・中央銀行総裁会議(G20財務相・中央銀行総裁会議)を開催している。
参加はEU、ブレトン・ウッズ機関、アメリカ、イギリス、日本、フランス、ドイツ、カナダ、イタリア、ロシア、オーストラリア、中国、ブラジル、アルゼンチン、メキシコ、韓国、インドネシア、インド、サウジアラビア、南アフリカ、トルコ。

※2 ユーロ導入国: アイルランド、イタリア、エストニア、オーストリア、オランダ、キプロス、ギリシャ、スペイン、コルナ、スロベニア、ドイツ、フィンランド、フランス、ベルギー、ポルトガル、マルタ、ルクセンブルク計17カ国

※3 EC(欧州連合):  オーストリア、 ベルギー、 ブルガリア、 キプロス、チェコ、ドイツ、 デンマーク、スペイン、エストニア、フィンランド、 フランス、ギリシャ、 ハンガリー、アイルランド、イタリア、 リトアニア、 ラトビア、 ルクセンブルク、 マルタ、 オランダ、 ポーランド、 ポルトガル、 ルーマニア、 スロバキア、 スロベニア、 スウェーデン、 イギリス 計27ヶ国

※4 サッチャー元首相の慧眼: 彼女の凄さはユーロに参加しないという長期を見通した正しい判断だけではない。首相として当時ソ連のゴルバチョフと会談した際、「この人は今までのコミュニストとは全く違う」と記者会見でコメントした。はたして、ゴルバチョフはペレストロイカに着手して、ソ連を共産党政権から開放した。いわば彼女はゴルバチョフを発掘した最初の西側リーダーだったとも言えます。




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