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TPP 「核の傘」という幻

石原慎太郎氏の著作、恐いもの知らずな引用第2弾。

万が一クレームになったら、即削除なので悪しからず。

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アメリカによる日本統治は実に巧みに、実に効果的に運ばれてきたものだとつくづく思います。

その象徴的な証左は広島の原爆死没者慰霊碑に記された
「過ちは繰り返しませぬから」という自虐的な文言です。
これでは主語が我々日本人ということになる。
過ちを犯したのは、彼らアメリカ人ではないか。

(略)

私は当時の佐藤総理の許しを得て、直接の同行ということではなしに、
どこか外国を迂回しワシントンで合流ということで、
私と竹下登がワシントンに随行し脇から返還交渉を見守ることができました。

出立前、あの交渉の密使として活躍していた友人の若泉敬から、
アメリカにいったら必ず日米安保の基軸である各戦略機能の最大拠点となっている
NORAD(ノース・アメリカン・エアロスペース・ディフェンス・コマンド)、
SAC(ストラティジック・エア・コマンド)を是非見てこいといわれ現地を訪れました。

すでに水爆時代にさしかかっていた当時の世界の、というよりも主にアメリカとソヴィエト間での、
少なくともアメリカ側の戦略システムは、恐らく広島長崎の惨禍を意識してのことでしょう、
アメリカは絶対に核戦争の最初の引き金は引かない、
相手の核攻撃を認知した上であくまで報復のための第一弾を行うという原則であって、
そのために自国の東西に強力な警備情報システムを展開していました。

日本の在る西側の太平洋空域に関しては反撃のためのカリフォルニアのバンデンバーグ基地があり、
そこからはホワイトハウスの指令によって飛来する相手を打ち落とすミサイルが発射され、
併せて相手の基地を報復して叩く核を搭載した大陸間弾道弾が発射される。

しかしそれはあくまでNORADによる攻撃確認がホワイトハウスに報告され、
それを踏まえてホワイトハウスが決断の上でSACに命令し報復の引き金が引かれる、
ということでした。

私がコロラド州のコロラドスプリングスの、
頭上で相手の水爆が爆発しても警備システムの機能が損なわれないためにと、
アメリカ中で一番硬質な岩でできているシャイアンマウンテンをくりぬいて、
上下、前後左右、幅一メートルもあろう巨大な鋼鉄のコイルで作られた
螺旋の幅数メートルのスプリングで支えられ、つまりくりぬかれた山中の虚空に宙吊りされた、
容積は当時日本に出来たばかりのマンモスビル、霞が関ビルほどのNORAD本部を訪れた時、
丁度アジアからの新聞記者が訪問中だったが、議員の私と彼らは別待遇で、
私は司令官じきじきの案内でかなりの奥部までを視察できました。

その結果私が得た認識は、現地における彼等の説明の通りだと、彼らが日本で口にしている、
アメリカに依る核戦略での日本への抑止力なるものは機能的に存在はしないということだった。

私がそういったらNORADの司令官は、
「当たり前ではないか、第一、アメリカの核戦略展開はあくまでアメリカ自身のためのものであって、
 それを証すようにこの警備本部の名前を見てみろ、
 あくまでノース・アメリカン・エアロスペース・ディフェンスだ。
 ノース・アメリカとは、アメリカ本土とアメリカに隣接している東部カナダの一部であって、
 日本が我々の警備体制の管轄内に入る訳がない。
 日本は我々の国からは遠すぎ、ソヴィエトからは近すぎる。
 我々は重要な海軍基地のあるハワイをも敢えて見殺しにするだろう。
 ハワイが攻撃を受ければこれは歴然とした攻撃とみなせるし、
 もし彼等がハワイを飛び越してきたら、彼等を迎撃して打ち落とすのは
 ハワイからカリフォルニアの間の海という際どい作戦になるはずだ」

「ということは、この基地を基点とするアメリカの核戦略は
 日本に対する警備力も抑止力も全く持たぬということか」
念を押して質したら、

「その通りだ。
 政治家たちが何をいっているかは知らないが、
 我々にそんな力はないし、つもりもない。
 この時代にそれが心配なら、何で日本は自前の核を持って相手を牽制しないのだ」
といい返され私には言葉がありませんでした。

さらに私にとってショックだったのは、当時まだ若造の私が日本の国会議員として
何と初めてこの基地を訪れた者だということだった。

沖縄返還に関して核の持ちこみ云々について激しい議論があり、
何にせよその前提に岸総理時代に改訂された安保条約によって
冷戦時代の核の脅威に関してはアメリカの抑止力が働いているということを
与党も野党も大前提(アプリオリ)として話していたくせに、
肝心の与党の政治家が今まで一人として
アメリカの二つの核戦略基地を視察したことがないという事実にあきれ返り、
空恐ろしい思いをさせられました。

それにしても国会なる場所で一体何を根拠にして、
日本に関する核に関わる安危を論じていたのだろう。
百聞は一見にしかずという事の原理の代わりに、
自らの原体験よりも他人のいうことの方が信憑性ありということなのだろうか。
アメリカ様が黒を白とおっしゃれば、日本人は黒く見ていても白と信じるということか。
愚かな、というより実に危うい話です。

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★「新・堕落論 ~我欲と天罰~」
  石原慎太郎著 新潮新書 720円+税 2011.7.20初版 2011.9.5第7刷
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登録日時:2011/09/26(00:07)

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