(連結業績予想)
事業収益につきましては、提携先製薬企業からの開発協力金、研究協力金、マイルストーン収入等はあったものの、がんペプチドカクテルワクチン療法剤C01を用いた膵臓がんに対する第III相臨床試験(COMPETE-PC Study(COMbined PEptide ThErapy for Pancreatic Cancer))の早期中止決定により、C01に関する複数の提携契約交渉を協議の上中断したこと、その他の医薬品候補物質の提携交渉も継続はしているものの今年度末までの契約締結が困難である可能性が高いこと等を主な要因として、当初予想を下回る見通しとなりました。一方、研究開発費につきましては、医薬品候補物質の同定及び最適化を行う創薬研究、ならびにCOMPETE-PC Study を除く各開発パイプラインは順調に進展しており、当初予想通り推移する見通しです。
これにより、営業利益、経常利益、当期純利益につきましては、事業収益の減少を主な要因として当初予想を下回る見通しとなりました。
(個別業績予想)
個別業績予想につきましても、連結業績予想と同様の理由により、発表済み数値より減少する見通しとなりました。
このような理由により、業績予想を修正いたします。
【研究開発の状況について】
(ペプチドワクチン)
当社は治療用がんワクチンとして「がん特異的ペプチドワクチン」を塩野義製薬株式会社、小野薬品工業株式会社、並びに大塚製薬株式会社へライセンスアウトしており、それらに加え、当社独自で、胃がんに対するOTSGC-A24ワクチンの開発を進めています。OTSGC-A24は「がん特異的」ペプチドが主たる治験薬です。シンガポール・韓国・日本の3カ国で医師主導の第I/II相臨床試験を実施中であり、さらに開発を加速してまいります。
また、パートナー企業および当社が権利を保持する治験薬を利用した治験を実施している医師主導治験主催者に対し、今後とも弊社に蓄積された開発ノウハウ情報提供等の研究協力、サポートを積極的に行って参ります。
(低分子医薬)
ゲノム包括的遺伝子解析により発見された新規キナーゼを標的とした分子標的薬を複数研究開発中です。すでに、がん幹細胞の維持に重要な分子であるMELK(Maternal Embryonic Leucine zipper Kinase) を標的としたOTS167については、標準療法不応の固形がんに対する第I相臨床試験を米国にて実施中で、すでにプロトコールに規定されている初期安全性段階は終了し、引き続き用量を増やした臨床試験を進めております。現時点までに、重篤な副作用はなく順調に試験が経過しております。OTS167は動物実験で乳がん、肺がん、前立腺がん、膵臓がんなどに対し、強力な抗腫瘍効果を確認しており、今後これらのがん種への適応拡大を諮ってまいります。
また、細胞分裂に重要ながん特異的新規標的分子に対する最適化化合物としてOTS964(仮称)を同定しております。動物実験で副作用もなく、がんの消失等顕著な結果が得られたことから、1年以内の臨床試験開始を目途に、製剤化検討及び非臨床試験を進めております。
これらに加え、複数のキナーゼ以外の新規標的分子(メチル化転移酵素など)に対するリード化合物をすでに同定しており、現在、それらの最適化を進めております。これらの低分子医薬候補物質の臨床開発を強力に推進してまいります。
(抗体医薬)
新規治療用抗体OTSA101 につきましては、現在フランスで肉腫治療の世界的権威であり、欧州がん研究・治療機構(European Organization for Research and Treatment of Cancer:EORTC)元会長のJean-Yves Blay 教授主導のもと、軟部肉腫の一種である滑膜肉腫患者に対する第I相臨床試験を実施しております。これまでに重篤な副作用もなく順調に経過しております。なお本剤は、欧州委員会(European Commission)及び米国食品医薬品局(FDA)より、軟部肉腫に対するオーファンドラッグ(希少疾病用医薬品)に指定されております。第I相臨床試験終了を視野に入れ、有効性を検証するための最終臨床試験デザインの検討を行っております。
以上、当社の創業以来の企業使命である「有効性が高く、より副作用の少ないがん治療薬・治療法を一日も早くがんに苦しむ患者さんに届けること、がんとの闘いに勝つこと」を可能な限り早期に実現すべく、今後も研究開発を進展させてまいります。